メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

ここから本文エリア

朝日新聞デジタル > 転職 > あの人とこんな話

朝日求人ウェブ
朝日新聞に掲載された求人情報
朝日新聞に掲載された求人情報
会員登録   会員登録すると直接応募やwebメールでの
送受信など色々な機能が利用できます。
ログイン  
パスワードを忘れたら ヘルプ
ご利用にあたって お問い合わせ
 
引っ込み思案だけれど
人恋しい、仕事も恋しい
写真 芸人/俳優
ヒロシ
さん
ヒロシ ●1972年生まれ、熊本県出身。九州産業大学商学部卒業。漫才コンビを経てピン芸のお笑い芸人として人気を得る。2007年『転校生 さよならあなた』で映画俳優デビュー。ドラマ「タイガー&ドラゴン」を始め、2時間ドラマにも出演するなど俳優としての評価も高い。著書に『沈黙の轍 ―ずんだれ少年と恋心―』『ヒロシです。華も嵐ものり越えて』など。8月13日(土)から公演予定の舞台「バッド・アフタヌーン 〜独立弁護士のやむを得ぬ嘘〜」(会場:赤坂RED/THEATER)に主演する(公演サイト http://www.amuse.co.jp/stages/bad/)。

 にぎやかなお笑いの世界にあって、ヒロシさんは「静」の芸風だ。テーマソングが流れ黒いスーツ姿で語りだすと周囲は息を潜めて聞き漏らすまいとする。悲しげに、どうしようもなく可哀相な自分を嗤(わら)う独特の「自虐ネタ」でブレークした。

 人見知りでおとなしい少年だったという。だが面白いことやお笑いが好きだった。九州で大学を卒業し、地元で吉本興業に3年間所属してから上京する。「漫才コンビを組みました。でもね、上にはすごい数の先輩たちが、パワー全開で頑張っているわけですよ。力がなくて入り込む余地がなかった」

 コンビを解散し、事務所に所属してはいるものの、生活費は夜のアルバイトで稼ぐ。

 「引っ込み思案で、田舎育ちで、勉強もスポーツも得意じゃないし、不器用だし、モテないし。俺って悲しいなあと思って(笑)。それで自分が独白するピン芸を始めたんです」

 ドカンとは受けない。だが100人観客がいると数人が驚くほど笑ってくれる。お笑いコンビいつもここからの山田一成さんが「それでいい、もっとやってみろ」と背中を押してくれた。最大公約数の笑いではなく、少数に刺さる笑い。でもそれは、本来は引っ込み思案である日本人の、本音に突き刺さった笑いではなかっただろうか。やがてヒロシさんはお笑い界の寵児(ちょうじ)となった。

 ブレークとはすさまじいもので、コマーシャル、ドラマ、バラエティーと眠る時間もないほど仕事が舞い込んだ。だがしばらくすると潮が引くように声がかからなくなり、数年の静かな時間を経て、お笑いはもちろん、今度は舞台の主演俳優として戻ってきた。

 「仕事がない日々は、貯金を切り崩して生きてきました(笑)。まだ俺を必要としてくれることがうれしいですよ。世の中の引っ込み思案のみなさんも、細くても人とのつながりは切らないでね」

 自分を見据える人は強い。

(7月25日掲載、文:田中美絵・写真:南條良明)

さらに古いバックナンバー >>