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一製品に人生を懸ける。
モノ作りは永遠に面白い
写真 ハードロック工業(株)代表取締役社長
若林 克彦
さん
わかばやし・かつひこ ●1933年大阪市生まれ。大阪工業大学卒業後、バルブメーカーに入社し、設計技師となる。偶然手にした緩み止めナットをヒントに「U-ナット」を開発し、冨士産業社(現冨士精密)創業後、「ハードロックナット」を開発、74年ハードロック工業設立。同社製品は日本の新幹線、台湾・中国・ドイツ・英国などの高速鉄道、東京スカイツリー(r)、瀬戸大橋など採用多数。ニューズウィーク誌「世界が注目する日本の中小企業100社」に選出。著書に『絶対にゆるまないネジ 小さな会社が「世界一」になる方法』がある。

 安心して新幹線や自動車に乗れる。私たちにとっては当たり前のことを実現するために、どれほどの仕事がなされているのか。改めて考えると思わず背筋が伸びる。若林さんが責任を持って世に送り出すのは、振動や気候、日々の使用などで決して緩むことのないネジである。開発したネジは、新幹線のスピードにも東京スカイツリーを支える高さにも、緩みが全く出ないという。

 「命の安全を考えなくてはならない製品ですからね。それはいくら改善しても、工夫しても、ここで終わりということはない。緩まないネジだけの専門製造会社は、世界広しといえども、ほとんどないそうですよ」

 ネジは緩まないだけでいいというものではなく、必要に応じて緩めたり外したりできなくてはならない。若林さんは、バルブメーカーに勤務していた20代の頃、国際見本市でネジに偶然出会った。サンプル製品をもらって帰り、飽かずに眺めているうちに、これはもっと改善の余地があると構想が浮かぶ。図面を描き、試作品を作り、ついには独立して製造会社を立ち上げる。

 「世に出ている製品はどれも発展途上品です。ネジに限らずほぼ全てのモノは、今それが使われているけれど、待てよ、付加価値を加える要素はないのかと見つめ直すことができる。どんな仕事も原点は同じ。自分が不便なことは、人も不便に感じている。それを見極めていくことだと思いますね」

 この精神で40年近く、緩まないネジは日本の中小企業発、世界トップクラスの製品に育った。

 さらに、ロングセラーでもある。そのひけつは「一つのテーマを徹底的に掘り下げることだ」と若林さんは言う。いつも、どこでも、いつまでも、考えているのはネジのこと。おそらく世界にそんな人はいないだろうと愉快そうに笑う。

 発明が大好きで、小学校5年生で母のために「送風機付きカマド」を作った少年は、人の喜びが生きがいの、日本が誇るプロである。

(6月25日掲載、文:田中美絵・写真:南條良明)

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