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「攻め」を忘れない
写真 コスチュームアーティスト
ひびの こづえ
さん
ひびの・こづえ ●1958年静岡県生まれ。82年東京芸術大学美術学部デザイン科視覚伝達デザイン卒業。88年のデビュー以来、雑誌、ポスター、テレビコマーシャル、演劇、ダンス、バレエ、映画など幅広い分野で、ファッションデザイナーとは異なる視点で独自のコスチュームを作り続ける。日本グラフィック展にて84年に奨励賞、89年に年間作家新人賞受賞、95年には毎日ファッション大賞にて新人賞・資生堂奨励賞受賞。作品集に『ひびのこづえの品品』他多数。8月11日から福井県鯖江市で個展を開催。

 服の力、服の不思議。そういう感覚に突然出会うことがある。ひびのさんの個展や舞台衣装は、私たちを非日常へと招待する。またその一方でひびのさんは、心地よく、モノを大切にする暮らしに溶け込む衣類や小物も手がける。布や素材を用いて縦横無尽に表現すると言えばいいだろうか。

 大学卒業後の仕事のスタートは、アパレル会社だったそうだ。テーマを与えられて布地をデザインする仕事に就くが、3カ月ほどで体調を崩し退職している。

 「その時はなぜこんなに苦しいのか分からなかったのですが、芸大4年間の学校生活は、ただひたすら自分のことだけを考える時間だったのですね。自分の表現を培養できた。だから社会に出て、人から指示されて作ることができなかった」(笑)

 その後はイラストレーターとして、仕事を続ける。3年は頑張ると決め、頭角を現していく中で、楽しんで引き受けていた服を作る仕事が評価され始めた。「グラフィックからこっちへ越境したのです(笑)。布って本当に素晴らしいですよね。色、質感、素材の豊かさと変幻自在。これは表現の財産だと思いました」

 29歳でコスチュームアーティストを名乗る。前例がない、師匠もいない。だが、「服」なのに、とがった創作は、広告や演劇の世界から引く手あまたになっていった。

 「依頼してくださった相手を驚かせたい、想像以上だと言わせたい。いつもそう考えて熱くなっていますね。予算がない、期日が冗談のように厳しいと文句を言いながらも、やってみせようじゃないのと、攻めの姿勢です。グサッと刺さったかどうかが決め手」(笑)

 ひびのさんは、優しい声で話す人だ。ふんわりとした笑顔が目の前にある。家事が好き、とも言う。だが、仕事についての言葉をこうして文字にすると、内にたぎる強さを感じる。

 「私って、毒だらけなの」とおかしそうだ。その毒とは、日常の中に、人には見えない何かを発見する鋭さに違いない。

(7月16日掲載、文:田中美絵・写真:南條良明)

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