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一つを突き詰めてこそ
マルチの才能も花開く
写真 (株)ポスターハリス・カンパニー代表取締役
笹目 浩之
さん
ささめ・ひろゆき ●1963年茨城県生まれ。87年(株)ポスターハリス・カンパニーを設立。94年現代演劇ポスター収集・保存・公開プロジェクトを設立。2000年(株)テラヤマ・ワールドを共同で設立。09年三沢市寺山修司記念館副館長に就任。自らプロデュースした演劇「寺山修司没後30年/パルコ劇場開場40周年記念公演『レミング 〜世界の涯まで連れてって〜』」がパルコ劇場(渋谷)にて4月21日(日)から上演予定。

 演劇や映画、イベントなどのポスターを飲食店や劇場などに貼り続けてもう30年になる。

 19歳の時、寺山修司主宰の劇団、天井棧敷の公演「レミング」を観(み)て衝撃を受けた。「セリフがとげのように心に突き刺さった。浪人したのに志望校に入れず、何をしていいのか分からないまま悶々(もんもん)としていた自分の、心の殻が打ち砕かれた瞬間でした」

 入団を希望するも、翌年、寺山氏が他界。その矢先、寺山氏の元夫人と出会う。そして「演劇に興味があるなら手伝ってほしい」と言われ、始めたのがポスター貼りだ。

 「人の嫌がる仕事だったけれど、自分には人生最大のチャンスに思え、必死で取り組んだ。毎晩70軒近くの飲食店を回り、工夫も重ねました」

 店の人たちは優しく、次第に人脈もできていく。仕事は楽しかった。だが周囲には不安定な生活に見えるのか、「将来どうするの?」と冷ややか。自分自身、ポスター貼りにどこか引け目もあり、言い返せないことも情けなかった。

 「そんな自分を打破したくて考え抜き、ポスター貼りを突き詰めようと決意。24歳の時に株式会社を起こしました。最初はバカにされるぐらいがちょうどいいと開き直ったら、迷いも吹っ切れました」

 社名のインパクトと劇場ブームの追い風もあり、ビジネスは軌道に乗る。1994年からはポスター収集を始め、国内外で展覧会を開催。最近はポスターを通じて演劇を見てきた経験を買われ、舞台のプロデュースも手掛けている。

 「事業拡大を勧める人もいたのですが、まずは目の前のことに全力で専念しました」。ごく普通に、コツコツと。変わったことは何もしていない。「でも、こうしてマルチに様々な仕事ができているのは、ポスター貼りという一つのことを突き詰めたから」

 継続によってつかんだ力は強く、たくましい。それは未経験のことにも応用でき、新たな才に導いてくれるようだ。

(3月11日掲載、文:井上理江・写真:南條良明)

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