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登りたい願望が体に届き
肉体が応えてくれる。
プロフリークライマー
平山 ユージ
さん
ひらやま・ゆーじ ●1969年東京都生まれ。航空工業高等専門学校卒業。在学中の15歳からクライミングを始め、17歳で日本トップクライマーとなる。19歳で単身渡仏、88年初出場のマルセイユ国際コンペで8位。その後多くの国際コンペで好成績を残し世界のトップクライマーにランクされる。97年米国ヨセミテ渓谷1100mの岩壁を2日間で完登、前人未到の記録を作る。98年と2000年にワールドカップ総合優勝、99年の世界選手権準優勝。同年、フランス・ニースにて世界最難ルートを初見で登るという記録を残した。オフィシャルサイト(http://www.jsmgroup.co.jp/yuji/)

 その手と足だけで1999年、世界で最も難易度が高いといわれるフランス・ニースのモータルコンバットのルートを初見で登る、という前人未到の記録を達成したのが平山さんである。

 その2年前、97年にはヨセミテ渓谷1100mの岩壁をわずか2日間という前人未到の時間で完登している。これは歴史的な冒険として各界から賞を受けた。フリークライミング競技の世界でトップクラスのアスリートである。

 「目覚めてしまったのは高校時代です。誘われて岩に登ってからクライミングが頭から離れなくなりました(笑い)。10代のうちにもう本場へ行きたくてフランスへ渡り、ただただクライミング漬けの日々。その当時から、自分の身体能力ならいけるかもしれないというひそかな自信も育っていたように思います」

 強豪がひしめく国際的な大会で、精悍(せいかん)な日本人の青年がビッグタイトルをさらっていった。天性のクライマー、最も美しいスタイルで登ると評される。 

 「自分のこの肉体と直感でいいところまでは来た。ところがある日、フランスのクライマーたちが非常に論理的で、綿密な登り方をしていることに驚きました。まるで自分が登る姿を映像で見ているように、明確なイメージトレーニングをしている。あの岩には右の足を掛け、次はこちらの手を使い、と」

 平山さんに新たな視界が開ける。意識してイメージする身体の動きが自分の肉体の中に取り込まれ、もともと生まれ持っていたような能力になっていくのだという。

 「小さくてつかみ切れない突起がある。何度もトライするのに指の先さえ掛からない。でも繰り返すうちに、あるとき突然その突起が大きくなっている(笑い)。つかめる瞬間がやってくるんです。身体というのは不思議なもので、筋肉や感覚が自分の願望に応えようとしているのではないか。いとおしくさえなりますよ」

 大自然の静寂の中、ただ一人で岩壁に張りつき、その突起に指を掛けて顔を輝かせる平山さんが見えるようだ。好きなことを臆(おく)せずやり抜いてきた、光を放つようなすがすがしさ。まだまだ高みを目指して生きていく人だ。

(5月15日掲載、文:田中美絵・写真:南條良明)

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