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ボストン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮者
ベンジャミン・ザンダー
さん
ベンジャミン・ザンダー ●1939年英国生まれ。幼少時から父にチェロを習い、のちスペインのガスパール・カサドに師事。64年ロンドン大学文学部卒業後、渡米。ボストンのニューイングランド音楽院講師、同音楽院ユース・フィルハーモニック管弦楽団指揮者。79年にボストン・フィルハーモニック管弦楽団を立ち上げ、現在に至る。97年世界経済フォーラムにて先進国首脳やビジネスリーダーに講演。人間の力を引き出す独自のコーチ力が有名になる。ザンダー指揮によるマーラーの「交響曲第3番」はドイツ・レコード批評家賞を受賞し、同マーラー「交響曲第9番」はグラミー賞にノミネートされた。共著に『チャンスを広げる思考トレーニング』(日経BP社)がある。今年7月(株)コーチ・トゥエンティワンの招請で初来日。コーチ・トゥエンティワン http://www.coach.co.jp

 ノンストップで4時間近いその講演は、高名な指揮者が人間の豊かな可能性について語り、さらに目の前で実証するという、今までに経験したことのないものだった。私たちがいかに自分自身で固く枠を作ってしまっているか。さまざまな例を引きながらザンダーさんは猛烈なスピードで話し、笑わせ、聴衆の心をあっという間に温かく動かし始める。

 大所帯の管弦楽団をおよそ30年間にわたって指導し、指揮者として数々の栄誉を手にしてきた。演奏家一人ひとりの力を引き出す名手である。そのリーダー・シップ力は、各国の首脳やビジネス・リーダーを心酔させ、指揮者でありながら名高いコーチとして存在を知られてきた。

 さてザンダーさんは、1本のペンを持ち、紙の上に厚い地層のような絵を描いてみせる。常識や思い込み、自分にはまだできそうもないという不安が堆積(たいせき)し、心を押しつぶしているような図だ。次に、子供が描くお日様のような絵が示された。自分を真ん中にして可能性を表すラインが八方に広がっている。方向はひとつではない、視点を変えよ、自分の窓をあちらこちらに開けと語る。

 壇上に登場した日本人のアマチュア演奏家が、ザンダーさんの踊りや歌つきの曲想分析で新たなイメージをつかみ鮮やかに変化していく。演奏家の顔が輝きだすのが印象的だ。

 「人間には、本当に豊かな可能性が潜んでいます。でも私たちは成長する過程で、あるいは厳しい教育などによってそれを押さえ込まれてきました。人生は楽しく、何でもやってみる価値があるなどと気楽なことをいうのは、まだ未熟だとかいわれてね(笑い)。

 でもその思い込みのよろいの下に、みずみずしい感情があるのです。私がコーチとして伝えたいのは、その潜んでいる輝きを軸にして自分を動かそうということなのですね」

 自分にはできないと思っているから、足が止まる、腰が引ける、コミュニケーションが阻害される、と。「大丈夫、できるよ」と繰り返し笑いかけるザンダーさんのエネルギーは、まるで太陽熱のようだった。

(9月4日掲載、文:田中美絵・写真:南條良明)

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