メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

ここから本文エリア

朝日新聞デジタル > 転職 > あの人とこんな話

朝日求人ウェブ
朝日新聞に掲載された求人情報
朝日新聞に掲載された求人情報
会員登録   会員登録すると直接応募やwebメールでの
送受信など色々な機能が利用できます。
ログイン  
パスワードを忘れたら ヘルプ
ご利用にあたって お問い合わせ
 
ひとつのラジオ番組として、世界レベルにあること。
スタッフのその志の高さが、今も私の中に脈打っている。
劇作家、「JETSTREAM」台本作家
堀内 茂男
さん
ほりうち・しげお ●1933年東京生まれ。学習院大学経済学科卒業。大学在学中に演劇集団「マスカラ」を立ち上げ、脚本を書き始める。のち、放送作家としてTVドラマ、TOKYO FM「JET STREAM」の構成台本などを執筆。同番組は67年から現在まで手がけ、間もなく放送1万回を迎える。著書に『市場』(「現代日本戯曲大系4」)、戸田邦雄作曲オペラ「伽羅物語」原作、戯曲集『方丈記』などがある。11月25日(木)にTOKYO FM「JET STREAM」放送1万回記念特別企画&番組が午前9時〜午前0時55分まで放送予定。
 青春時代を戦後の文化の混乱期真っただ中で、堀内さんは過ごした。今までとは異なった価値観が、大好きだった演劇の世界にも流れ込んできて、劇場にかかる演目は翻訳劇一色になっていたそうである。それに納得がいかなかった。

 「いわゆる赤毛ものと呼ばれた出し物に演劇人が夢中になっていた時代です。私たちは学生で若かったのですが、西欧の翻訳を日本語で演じても観客には届かないという実感を抱いていました。

 だから、私は生意気にも、フランスの劇作家イヨネスコの『椅子』という不条理劇を下敷きに、日本人の心に届く『市場』という作品を書き上げた。精神的に西欧に負けたくないと思っていましたね」

 シナリオ作家として仕事を続けるうちにテレビから声がかかる。子供のための良質な民話などを数多く手がけ、さらに新しいラジオ番組の制作にも参加する。それが1967年、TOKYO FM「JET STREAM」がスタートした時だった。

 「いまだに書いていますから、私の人格の一部はこの放送によって作られたと言えるほどですよ(笑い)。開始当初から、どこで聞いても見劣りしない、本当に質の高い番組を続けていこうという強い思いが、スタッフの全員にありました。

 私は数分のナレーション原稿のために、それこそ毎日毎日取材に明け暮れていますね」

 世界各国のエピソードを集めるために現地取材はもとより、各観光局をまわり、人にも会い、雑誌、新聞、映画といつも目を凝らして今日に至っている。

 だからいつも、気持ちは全世界を見ているのだと堀内さんは言う。

 「バーゼルという都市で行われたカーニバルのエピソードを放送したら、長い長い手紙をくださったリスナーがいました。その方の青春時代がよみがえった、と。それこそが喜びですよね。人生という旅路の思い出の扉を開く、小さなフックになれる。作り手の知らないところで豊かな時間が流れているのでしょう」

 長身。控え目な語り口。でもその目は知的な好奇心に満ちていて、まだまだ良いエピソードを追い求めている。洗練された放送の、発信者の一人である。  

(11月22日掲載、文:田中美絵・写真:南條良明)

さらに古いバックナンバー >>