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「上着を脱いでいいですか。シャツの腕をまくっていてもいいですか」。そう言いながら谷口さんは入室してきた。財務省で29年間のキャリアという堅い印象はない。よく通る声、闊達(かったつ)な話し方。勢いのある仕事の現場のにおいがする。
財務省在職などの公職中に長期滞在も含めて訪れた国は50カ国を超えている。国際会議などへの参加はもちろん、先進国以外の多くの政府の実情から人々の暮らしまで、その目で確かめてきた経験を持つ。
「公務員だった父の教えが、大きな仕事をしなさい、でした。大きな視点に立って人の役に立てと育てられたのです。それが自分にとって何かは分からなかったのですが、とにかく英語だけはと必死になりましたね」
入省後にアメリカでMBA取得を目指して学んでいた時に、世界中から集まってくる精鋭たちにひどく刺激を受けたそうである。在学中に起業するのは当たり前で、NPO法人を立ち上げ社会事業家として活動する人もいた。レベルが高かった。
「プロフェッショナルとはこういうことかと思いました。専門分野を究め、それを武器に果敢に行動する。僕もここでスイッチが入った(笑い)」
そしていま、谷口さんのセカンドステージは世界銀行だ。国際復興開発を掲げ、貧困のない世界を目指して途上国へ幅広い援助を行う。日本も第2次世界大戦後に、新幹線や黒部ダム、高速道路建設への資金や技術援助を受け支えられた。
「資金だけではなく、開発計画や教育などさまざまな支援をします。日本の若い人にも英語力と専門職を活(い)かして思い切り働いて欲しいと思う。そこでは世界中のプロフェッショナルと仕事ができる。実に実に面白いですよ」
その面白さは、プロと交わる中で自分の成長を自分自身で知る、感動に近いものだという。谷口さんの言葉は、自身の若い時代の体験を踏まえて熱を帯びる。心動く若い人が現れそうだ。
(6月8日掲載、文:田中美絵・写真:南條良明)
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