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「芸術は、命がけ。」
 草間彌生が語る仕事-4
写真
仕事は全人格を注ぐもの

初めに覚悟をする

 日本はかつて素晴らしい美術を生み出してきた国ですが、創作の力は次第に衰え、バブルの頃には経済力にものを言わせて美術館を乱立させ、名画を驚くほどの高値で買い取っては貴重なお金を消費しました。現在は一転して日本中の美術館が資金難にあえいでいると聞いています。

 少しずつ変化も見えますが、多くの日本人は「美術は遊びに過ぎない、ぜいたくなもの」と考えているように思えます。しかし美術や芸術に触れることは、ことさら意識しなくとも人間の生きる力になっていくのです。香川県・直島には、私の大きな黄色い「南瓜」や「赤かぼちゃ」が常設展示されていますが、作品に出会った人たちはその衝撃を魂のどこかに取り込んでいくでしょう。子どもも世界の思想家も同じように、私の作品を好きだと言ってくれる。人間はつながっているのです。

 芸術の根源は、作品を通してコミュニケーションしながら一人ひとりの異なった人間性を本気で認め合い、互いを大切にする心を引き出すことです。だからこそ制作する人は「自分の表現を追求して、人間の本質に至る」ために、自分を深く信じて欲しい。例えば今、中堅の芸術家たちが若い画家を育てて世界に紹介する手伝いをしていますが、若い人はその援助に感謝はしつつも、表現やメッセージまでは引っ張られてはならないのです。

 芸術も含めて、仕事にはまず初めに「全人格を注ぐ覚悟」が必要だと思います。技術も考え方も、自分が今持っている力は使い切り、また次を引き出していくことでしか成長はありません。

仕事に頂上はない

 長い創作活動を続けていると「今は山の何合目まで来ているのですか」と聞かれることもありますが、私はいつも山の頂をいっそう盛り上げて高くしているのです。これからも、日本で誰もやっていないような新しい世界と新しい思想を作っていくつもりです。それを全部成し遂げるのに400年くらいかかるとしても、それでも今私は出発する、そんな気持ちで毎日膨大な量の仕事を休みなく続けています。生きている限り、手足の動く限り仕事をし、私の肉体は消えても、永遠に人に語りかけるような芸術を制作したいのです。

 仕事とは、呼吸をする限り、どのような形であっても続けていくものです。若い人は周囲に引っ張られてはならないと言いましたが、いくつになっても重要なのは自分の内から湧き上がってくる思いです。社会はルールや慣習を作り、個人にタブーを押しつけてくるのですが、自分の生き方をそこに合わせても、与えられた命を使い切ったことにはならない。

 私は十代の頃から周囲の人たちの冷たい視線を受けたこともありますが、自分は自分の生きたいように生きると決めて、それを実行してきました。苦しいこともありましたが、この道を歩いてきてよかったと思います。「芸術に全てをかけて生きる」を指針にしています。(談)

くさま・やよい ●前衛芸術家・小説家。長野県生まれ。子供の頃から水玉と網模様をモチーフに絵を描き始める。1957年渡米。巨大な平面作品など多くの作品を制作して高い評価を得る。また反戦運動や多数の「ハプニング」、映画製作などを行う。73年帰国。美術作品の制作発表を続けながら小説、詩も創作、83年小説『クリストファー男娼窟』で第10回野性時代新人文学賞受賞。94年から野外彫刻を手がける。98〜99年アメリカ・日本で大回顧展が巡回。他に国内外で個展多数。第50回芸術選奨文部大臣賞、外務大臣表彰、朝日賞、紺綬褒章、高松宮殿下記念世界文化賞、文化功労者顕彰など受賞多数。全世界100カ所の美術館に作品収蔵。2012年1月から、国立国際美術館(大阪)を皮切りに国内各地で展覧会を開催予定(問い合わせ先:朝日新聞社大阪企画事業部 電話06-6201-4544)。公式サイト http://www.yayoi-kusama.jp