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「職人でいる覚悟」
 山下達郎が語る仕事-4
写真
文化を傷つけない

人の仕事には
敬意を払おう

 音楽だけではなく、映画や小説、絵画、スポーツなどの分野も同じだと思いますが、商品として売っていく中で「世の中を変える世紀の傑作」とか、「数百万人を感動させた」と誇大宣伝を打つケースが少なくない。さらに、多くの媒体や評論家と呼ばれるような存在も巻き込んで、過大評価を流布する例もたくさんあります。そのこと自体はビジネスなので仕方がない。

 それは内容とは別の問題なのに、宣伝ほどじゃないとか、過大評価が気に入らないと思う人々が、今度は批判を浴びせます。そういう過大な称賛と不必要な批判が錯綜(さくそう)し対立するたびに、文化は傷つき、人の気持ちもすさむように思えます。

 僕は58歳になり、この年齢になってどうにか、的外れな批判を気にせずに生きられるようになりました。できることなら、今の若い人にはそういう周囲の雑音に負けないで仕事をして欲しいと思っていますが、残念なことに、今はそれがとても難しい時代です。厄介なことに人間は、千の賛辞の中の一つの罵倒をすごく気にする動物なので、その中で冷静に自分の仕事を自己評価することは至難です。まして、自己の克己心だけでその苦しさを乗り越えていくことはさらに難しい。

 だからこそ職種を問わず、仕事人になったら、好き嫌いと良しあしをきちんと区切って、他者の作品や仕事への敬意を払わねばなりません。一つの作品が形になるまでに費やす時間や労力は半端なものではありません。良しあしや好き嫌いがあるのは当然ですが、度を超した評価や批判は、文化自体をも曇らせていくものです。

作品を受け手が自由に
感じることが文化だ

 歌はひとたび世の中に出ると、自分の手を離れます。そこに聴き手の方々の共同意識が加わり、しばしば作り手の本来の意図とは違った意味を持ち始めます。僕の場合、それが一番極端に表れたのが「クリスマス・イブ」という曲でした。CMに起用されてブレークし、20年経った今もお聴きいただいています。

 昨年発表した「希望という名の光」という曲も、もともとは、沖縄のサンゴの養殖を自力で成し遂げた方の実録映画の主題歌ですが、今年3月の東日本大震災後には、癒やしの歌という受け止められ方をされるようになりました。

 それは僕にとってはとても意外なことでしたが、同時に歌の持つ運命だとも思っています。僕は国民的スターでもないし、テレビにも出ませんので、全ての人々を慰めるなんてことはとてもできないのですが、ただ、今までずっと僕の歌を聴いて生活してきてくださった方々に喜んでいただければと願うばかりです。

 自分の手がけた作品が、それを必要としていただける方々にちゃんと届いていくことが一番うれしい。仕事をしながら見ている先は、売れるとか売れないとかいう途中の雑音を通り越して、どこかで僕の作品を待ってくれている、見知らぬ誰かなのです。(談)

やました・たつろう ●シンガー・ソングライター/音楽プロデューサー。1953年生まれ。75年バンド「シュガー・ベイブ」としてシングル「DOWN TOWN」、アルバム「SONGS」でデビュー。76年アルバム「CIRCUS TOWN」でソロデビュー。80年発表の「RIDE ON TIME」が大ヒットとなりブレークする。アルバム「MELODIES」(83年)に収められた「クリスマス・イブ」が89年にオリコンチャートで1位を記録。20年以上にわたってチャートイン。日本で屈指のクリスマス・スタンダード・ナンバーとなる。84年以降、竹内まりや全作品のアレンジ及びプロデュースを手がけ、またCMタイアップ楽曲の制作や、他アーティストへの楽曲提供など幅広い活動を続けている。