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「編集しながら生きよう」
 藤原和博が語る仕事-3
写真
10代は直感している

すでに時代感覚を
つかんでいる子どもたち

 日本の経済成長というのは、1997年ごろが最後のピークで、そこから終焉(しゅうえん)に向かったと言われています。それ以後、98年から個人消費はずっと落ち続け、そこを転換点として成長社会から成熟社会へと移行して14年ほど経過しました。

 だから現在の中学生、高校生にとっては、成長社会も成熟社会も何のことか分からないでしょうし、おそらく二十四、五歳までの人にとっても、物心がついた時にはもう成熟社会です。そして、彼らは、先生や親が教える人生ノウハウどおりに素直に努力しても、この社会では同じかそれ以上の幸せは手にできないことを肌で分かっています。ガンガン物を作ってそれを消費する社会での方法論ではなく、周りに有り余るほどになった物や情報をどうやって、自分の知恵で編集していくか。その一人ひとりのフィルターこそが、これからの仕事力なのではないでしょうか。

 親や大人はよく「今の若い者は我慢が足りない」と言いますよね。でも、「みんなと一緒でいるための我慢」は何も生み出さないことに、大人はもう気づくべきだと思います。10代が日常の向こうに見ている未来は、もっと自分に引き寄せた柔軟な現実です。

中学生のまなざしは
大人の本気を見ている

 僕が初めて、民間から公立中学校の校長として生徒の前に立った時、裸で人前に立ったような怖さを感じました。手ごわいビジネスでさんざんもまれ、多くの講演もこなし、相手が大人なら大体反応を予想できる世界から、その経験が全く役に立たない場所に立ったからです。本を何十冊出していようが、仕事で業績を上げていようが、中学生には関係ないし、「このおじさんは僕らの役に立つのか」という一点で見つめてくる。

 小学生や中学生の前に立つのは、まるで研修のようでした(笑)。「自分が今まで蓄積してきたこととは一体何なのだろうか」「子どもたちの価値観から見て、それは価値のあることなのだろうか」。また時代や社会を僕自身の考えでつかんでいなければ、真剣に生きている子どもたちの前でブレてしまう。だから心して、新しい関係を切り結ばなければならないのです。

 本気を見せるために、最初はむき身でサッカーやバスケットなど部活動に出まくりました。体力はないし、振り向きざまのシュートで眼鏡が飛んだり、足が痛くて翌日出てこられなかったり、格好悪いこともたくさんあるんだけれど、それでいい。校長室はオープンにしてマンガを置き、出入り自由。壊れたコンピューターを置いていたら、すっかり分解して黄金色に輝くチップを喜んで持って帰る子もいましたね。

 中学生くらいになると、もう大人の人生を読んできます。この人は一生懸命に生きているか、人生を楽しんでいる人か、そして楽しい人生とはどんなことか、と。「仕事が合わないから辞める」というのではなく、「この仕事を工夫して面白くできないか」と修正する発想を子どもたちには伝えていきたい。大人もまた、自分の仕事を何度でも修正主義で見直すべきではないでしょうか。(談)

ふじはら・かずひろ ●1955年東京生まれ。78年東京大学経済学部卒業後、(株)リクルート入社。96年同社フェローとなる。2003年から5年間、都内では義務教育初の民間人校長として杉並区立和田中学校校長を務める。08年、当時の橋下大阪府知事の特別顧問を務めた。主な著書に『人生の教科書[よのなかのルール]』(共著)、『つなげる力』『35歳の教科書』他多数。最新刊に『坂の上の坂』(ポプラ社)がある。「藤原和博のよのなかnet」http://www.yononaka.net