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「新しいアングルを探し求めよ」 茂木友三郎が語る仕事―1
和の味を愛する国は、もっとある
しょうゆメーカーの
息子の発見

 日本人にとっては、空気や水と同じようにあるのが当たり前のしょうゆ。歴史が古いですから、何世代前までさかのぼってもしょうゆへの感覚は似ているでしょう。その味を作る家に生まれましたが、私も子供の頃から、日本古来のこの調味料には長い間、なんの関心もありませんでした(笑い)。

 目を開かれたのは米国での留学生時代。MBAを取得するために苦しい勉強をしていましたが、何しろ手元にお金がなくて、スーパーマーケットでしょうゆのデモンストレーションをするアルバイトに精を出していました。当時はスーパー内で調理をすることができたので、しょうゆをつけて肉を焼いてはアメリカ人のお客様にせっせと味を見てもらいました。これが驚くほど好評で、試食した10人中の7、8人がうまいと喜んで買ってくれる。実際に肉としょうゆの相性は非常によいと感じてはいましたが、食文化の違う国でここまで手応えがあるとは思いませんでした。

 20歳も半ば近くになってから初めて、しょうゆの持つ底力に目覚め、商品としての視点を持ちました。古くからの製品や仕事は、つい漫然と古いやり方のまま流してしまうのが私たちです。これはどの世界でも同じかもしれない。でも、この体験で私は新しいアングルを手にし、やるべきことが見えた気がしました。自分の仕事の意義がつかめた瞬間というのは本当にうれしく、腹の底から力がわいてくるものです。

肉体で感じた
甘くない仕事観

 外国の人もしょうゆが好きだという発見の他に、私はここでもう一つの実感を得ました。それは、仕事とは半端でなく厳しいものだということです。デモンストレーションのアルバイトは、朝から閉店まで立ちっぱなし。お客様に声をかけ、説明し、肉を焼き、重い荷を運び、それで時給は1ドルくらい。

 人はこんなに大変な苦労をして仕事をしているのだと思い至りました。それでもやむを得ない。普段は勉強に1日16時間も費やさないと授業についていけないし、夏休みはアルバイトです。負けてたまるかという力はこの時身につきましたね。

 だから私は、いま学生や若い人々に安易なアルバイトはするなといいたいのです。死活問題だというならともかく、時間をやり過ごしたり、遊ぶための資金を作る目的なら思い直してほしい。企業や店側も簡単な仕事で雇わないでほしい。安易に働けてそこそこのお金が入ると、仕事観が甘くなります。それを頭も体も覚えてしまう。これからいい仕事をしたいなら、自分の力を目いっぱい使う厳しさを選択したほうがいいでしょう。

 自分を追い込むような勉学や仕事を続け、乗り越えてきた人は見るからに集中力が違い、問題や新しいアングルを発見する力が違います。その厳しさがあなたの仕事を面白くするはずです。(談)

もぎ・ゆうざぶろう ●キッコーマン(株)代表取締役会長CEO。1935年千葉県生まれ。58年慶應義塾大学法学部卒業、61年米国コロンビア大学経営大学院(経営学修士課程)卒業。58年キッコーマン入社後、77年海外事業部長、82年常務取締役などを経て、95年代表取締役社長CEO、2004年より現職。米国ウィスコンシン州名誉大使、中央教育審議会副会長ほか公職多数。主な著書に『醤油がアメリカの食卓にのぼった日』など。藍綬褒章、オランダ王国オレンジ・ナッソー勲章受章。