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「分かり合う回路は作れる」
 平田オリザが語る仕事―3
写真
コミュニケーションも稽古

外資系企業は
訓練してやってくる

 「コミュニケーションがうまくできない、ましてグローバル化が加速する中でビジネス文化の違いに戸惑う」と、日本の企業人は言いますね。でも、それは日本人だけの課題ではありません。だからこそ外資系の企業は、自国以外へ進出する場合に、実は徹底してトレーニングをしてきています。彼らだって、企業風土の異なるビジネスコミュニケーションが簡単にできるとは思っていません。

 うちの劇団にニューヨークで長く仕事をしてきた人間がいますが、彼は、日本にこれから進出するアメリカ企業が日本人と会議をする時のシミュレーションに参加していました。そこの研修では劇作家も雇っていて、「日本人は会議の時にこういう発言をする」と具体例を体験させる。中国人ならこう発言し、韓国人ならこのように発言する、と。会議のシミュレーションを何度もさせ、綿密な準備をして日本に進出してきているのです。この準備の段階で、コミュニケーションに臨む気持ちが負けていないでしょうか。苦手だからという言い訳に、あぐらをかいてはいないかということですね。

 最近では日本でも、社員研修などで演劇的な手法やワークショップ的な手法を活(い)かす企業が増えてきました。例えば営業勧誘でも、昔ながらの強引なやり方ではなく、お客さんとどうやって良い関係を作るか、シミュレーションで学び実践していく。管理側の人間はよく、「今の若いやつらは」と精神論や教育論を持ち出しますが、そんなふうに個人の問題に帰さず、指導する立場の自分がコミュニケーション回路を作る努力を怠っていないか、振り返った方がいい。普段はモノを言うことが苦手な人にも、「発言しやすい場所を作ってあげる」「発言しやすい機会を作ってあげる」という工夫をしているでしょうか。

上意下達の構造は
本当に変わった

 ひとくくりにするわけではありませんが、やはり若い世代は「失敗を恐れる」特徴があります。ずっと、失敗すると怒られるという教育を受けて大きくなってきたので、上からの命令だからと検証もせず、ただ受け入れる。でもそんな時代ではなくなりました。だから耳を傾けてもらうには、三つの要素が必要です。それは「その命令自体に非常に合理性があるか」「命じられた自分が納得できるか」「社会的に間違っていないか」。つまり、企業の合理性一つだけではもう説得力がない時代が今なのです。

 グローバル化のコミュニケーションと同じように、世代間のコミュニケーションも、通じ合いたいと思う方が動くしかありません。例えば「一人ひとりが意見を言いやすい場所は、さまざまである」と認識を変えてみてください。ふとすれ違ったトイレの前で、軽く声をかけて質問する方が話しやすい人もいるはずです。そんなふうに「どうにかする力」をひねり出さなければなりません。

 世の中には多くのノウハウ情報があふれていますが、その画一的な方法論に振り回されるのではなく、どうすれば状況に応じて自分の頭を柔らかく使えるか、つながりたい関係を具体的にできるか、とにかく個別に話しかけてみることです。(談)

ひらた・おりざ ●劇作家・演出家。大阪大学コミュニケーションデザイン・センター教授。こまばアゴラ劇場支配人。1962年 東京都生まれ。国際基督教大学在学中に劇団「青年団」結成。95年「東京ノート」で第39回岸田國士戯曲賞受賞。2002年度から独自の公演やワークショップ方法論が国語教科書に掲載され、多くの教室で演劇が作られている。代表的な戯曲に「その河をこえて、五月」(朝日舞台芸術賞グランプリ受賞)他、著書『わかりあえないことから −コミュニケーション能力とは何か−』他多数。