メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

ここから本文エリア

朝日新聞デジタル > 転職 > 仕事力

朝日求人ウェブ
朝日新聞に掲載された求人情報
朝日新聞に掲載された求人情報
会員登録   会員登録すると直接応募やwebメールでの
送受信など色々な機能が利用できます。
ログイン  
パスワードを忘れたら ヘルプ
ご利用にあたって お問い合わせ
 
「分かり合う回路は作れる」
 平田オリザが語る仕事―4
写真
オフの発見は、仕事に効く

素顔を知る交流が
チームを強くする

 仕事が終わったら上司と部下が飲みに行く日本式コミュニケーションは、とっくに激減していますが、実は互いの人間性を知るという、いくらかのメリットはあったかもしれません。現在、私は、例えば企業の中でプロジェクトチームができた時に、なるべくビジネスとは関係のないイベントの実行を勧めます。もちろんビジネスは多忙を極めていて余裕がないことは承知のうえで、それでも初期の段階で1回でもオフに集う効果は、予想以上に大きいものです。

 アメリカではその目的のために、よくバーベキューパーティーをやります。昨日まで仕事のキャリアという一面で見ていた人たちそれぞれが、買い物がうまいとか、切ったり焼いたりがうまい、仕切ることが得意、一生懸命に皿洗いをする、金銭感覚がしっかりしている、タフだといったような素地をのぞかせ、互いに発見があります。おもちゃのブロックで巨大な船を作るような、全体でやるとパフォーマンスが上がることなら何でもいい。

 先日、売り上げ数十億というベンチャーのIT系企業にて、幹部社員全員で演劇を作るという授業をやりました。毎週1回、計6週間。社長以下幹部16人が三つのチームに分かれ、台本作りから舞台に立つまでやり抜き、最後の発表はほぼ全社員が見に来ました。新入社員が、幹部の必死な舞台を見てゲラゲラと笑う。その日から会社内の空気は、もちろん変わりました。演劇もコミュニケーションの自然な導入に活(い)かすことができるのです。

日本の中高年男性は
「対等」に気づこう

 私は、人の言葉に非常に関心が強いですが、欧米の言葉に比べて日本語には、対等な関係で褒め合うボキャブラリーが極端に少ないと感じます。上から下へ「よく頑張ったな」という種類と、下から上に「すごいですね」といった表現はありますが、同じ立場でたたえ合う言い方がほとんどありません。これでは、ビジネスが硬直してしまう。

 若い人は普通、すでに存在している会社のしきたりを学ぼうとします。居心地が悪いと感じたり、価値観が違うと思っても、それが会社だと上から諭されれば、反旗を翻すことはできにくいでしょう。でも、優れた企業が「さん付け運動」などを行っているように、これからは管理職や新入社員の枠を超えて、できるだけフラットな関係を作り、同じ言葉で褒め合ったり励まし合ったりすることが、仕事にとって大事なのです。

 「かわいい」という対等な言葉を女性は獲得しました。女子高生から派生し、子どもから主婦まで年代を超えて使っています。何でも「かわいい」というのは、ボキャブラリーがないのではなくて、年齢も立場も超えて同じ感覚を表現する対等な言葉がなかったから、必然的に生まれたものです。次は、例えば「いいね」とかが市民権を得るかもしれません。

 若い人が新しいアイデアをいきいきと周囲や上司に提案できる。仕事上の序列や年齢や性別を超えたコミュニケーションが当たり前になる。それが日本の仕事力になるのではないでしょうか。 (談)

ひらた・おりざ ●劇作家・演出家。大阪大学コミュニケーションデザイン・センター教授。こまばアゴラ劇場支配人。1962年 東京都生まれ。国際基督教大学在学中に劇団「青年団」結成。95年「東京ノート」で第39回岸田國士戯曲賞受賞。2002年度から独自の公演やワークショップ方法論が国語教科書に掲載され、多くの教室で演劇が作られている。代表的な戯曲に「その河をこえて、五月」(朝日舞台芸術賞グランプリ受賞)他、著書『わかりあえないことから −コミュニケーション能力とは何か−』他多数。