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「あなたを育てるのは自分だ」
 秋山進が語る仕事―1
写真
あたふたと仕事しよう

大学入学直後が
浅田彰氏に圧倒される

 奈良の田舎で鹿と戯れて、ごく平凡に幸せに育ちました。やるべきこともやりたいことも特になく、大学でしっかり勉強して経済学者になれたらと漠然と憧れている程度だった。でも、入学式直後の新入生歓迎セミナーで登壇した浅田彰氏の話を聴いて、そんな考えは吹き飛んでしまいました。

 彼は当時まだ、人文科学研究所の若手の助手。この年の秋に書籍『構造と力』を出版し、ニューアカデミズムの旗手として一世を風靡(ふうび)するのですが、それほどの人とは知る由もありません。話の内容はほとんど理解できなかったのですが、森羅万象、博覧強記の知識を縦横無尽につなげて語り、「世の中には、こんなに賢い人がいるのか」と衝撃を受けるほど、10代の私には想像もつかない別次元の知の世界をのぞかせてくれました。努力などではどうすることもできない、何があっても届かない異次元の頭脳。覚えているのは「世の人は、健全な肉体に健全な精神が宿ると申しますが、健全な肉体にいかほどの価値があるのでしょう」だけ(笑)。

 もしあの催しに参加していなかったら、私は研究者を目指していたのではないかと思います。大学の教授にはなれたかも知れませんが、引き返せない年月を費やした頃、一流の頭脳との埋めがたい差を思い知り、自分が二流であることを隠す算段をしていた気がします。この出来事があって大学入学数日で「自分はもう終わり」と思い、その後はハンドボール部に無理やり誘われたこともあって4年間走っていたんですね(笑)。仕事とか将来とかについて、何も考えていませんでした。

人から頼まれたら
何でもやってみる

 卒業後の入社動機も強いものではなく、ハンドボール部の先輩がとても格好良くて大好きだったので、こんな人が働く会社はどんな所だろうという好奇心で誘われた企業に入りました。若い人も迷っているかも知れませんが、私も、入社したからといってやりたい仕事があるわけではないし、頼まれる仕事の中から、その時自分で面白そうな案件を選んで一生懸命やるだけでした。現在もそれは変わっていないかも知れないな(笑)。

 ただその中で、生きるってどういうことかと考えるきっかけになった仕事がありました。かつてあるマッチングシステムを開発し、コンピューター専門誌でグランプリを受賞したのですが、これは、人のマッチングの方法をどんどん覚えて、それを新たなマッチングの際に提示するという人工知能を使ったシステムです。つまり賢くなる仕方までプログラミング化したので、放っておいても勝手にレベルが上がっていく。そこでふと、人間もこんなふうに順当に知識が増えていけば成長していることになるのかと考えたのです。

 私が導き出した答えはノーでした。成長の仕方までプログラミング化されているものって、結局は死んでいると思います。生きているって、予期せぬ状況の中で慌てふためいて、自分が予想しないようなものに変わっていくことではないか。どうしたらいいか困った状況の中であたふたした結果、何か訳の分からない経験則が自分の中に出来上がる。それが楽しく、面白いんです。仕事で迷い、振り回される今日も成長中だということですね。(談)

あきやま・すすむ ●プリンシプル・コンサルティング・グループ(株)代表取締役。国際大学GLOCOM客員研究員。1963年生まれ。京都大学卒業、同年(株)リクルート(現リクルートホールディングス)に入社し事業企画に携わる。2008年から現職。経営リスク診断をベースに、組織設計、事業継続計画、コンプライアンス、サーベイ開発、人材育成などを提供。麹町アカデミア(株)学頭。近著に『「一体感」が会社を潰す −異質と一流を排除する〈子ども病〉の正体−』などがある。