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「自分を知らずに終わるな」
 安藤優子が語る仕事―3
写真
「見え」を脱ぎ捨てられるか

やっぱり保身が
仕事を曇らせる

 何も怖いものがないような顔をしてカメラの前にいますが、毎日、持っている力を出し切れたかと振り返らずにはいられません。例えば、私はインタビューで失敗したと悔いることがあります。それは格好をつけた時。注目される状況であるほど、いい評価を受けたい、ここ一発は「さすが」と思ってもらいたいと身構えるからです。

 超がつくようなVIPとか、大統領へのインタビューとなると、メディアの前で格好悪く見えたくないから、周到に用意した質問事項にただ沿っていくだけという、自分の体裁を取り繕ったインタビューを続けてしまう。それは、今向き合っている相手に響くナマの力を持っていないので、真剣に応えようという相手の気持ちを削(そ)ぎ、さらに悪いことに、私も自分の次の質問で頭がいっぱいになって相手の話を聞いていない、その人をきちんと見ていない。寒々とした結果に終わります。長い間この仕事をしてきても、その失敗は一度や二度ではなく、インタビュー後には後悔しながら、人間は見えを張ってしまうのだと思い知ります。

 サミットの取材などで海外へ行くと、日本の記者は何度も推敲(すいこう)された質問事項を用意してきます。そこまで準備しても記者会見の会場で手を挙げない。大体アジアのプレス席は後ろに置かれるので気後れもあるのでしょう。しかし他のアジア・アフリカなどの英語圏外の記者たちは、もう何を言っているのか分からないようなめちゃくちゃな英語で大統領に挑みかかっていきます。発音も文法もお構いなし。自分がどう見えるかは眼中になく、仕事として聞きたいことは聞くという迫力が大統領を真剣にさせるのですね。同じ土俵に上がったからには安全圏内で身を潜めてしまうものかと、自分を励まさなくてはならないと思います。

誰もあなたの人生を
生きてくれない

 また安藤は過激なことを、という声が聞こえてきそうですが、私は現在の就職活動のやり方に懐疑的です。ほぼ同じようなスーツを着て、どこかで仕入れてきた企業受けする答えを携え、そつがない自分が採用される。この延長で、発言できない気後れする仕事人が生まれ、個人の力を発揮する機会を潰していないでしょうか。

 採用する企業の事情かも知れません。でも仕事を探す人は自問してください。あなたは「まあ取りあえずは、みんながやっていることだから仕方がない」と思いますか。この企業なら、まずまず格好悪くないという「見え」に縛られてはいないですよね。私のアドバイスは反逆児を育てそうですが(笑)、自分の気持ちの中にくすぶっている「何か違うかも知れない」という感覚は、やはり大事なものです。

 自分の人生は誰も代わって生きてはくれません。周囲からの期待に応えていくだけではなく、迷いながらでも自分を確かめながら仕事をして欲しいと思います。私の報道の仕事は20歳からアルバイトでの出発でしたから、仕事の知識も訓練もなく、いつも自分は本物じゃないという不安が消えませんでした。大学を卒業したのは30歳ですし、さらに、本物になりたくて大学院に入ったのは47歳。でもまだ、自分を知りたいと思います。(談)

あんどう・ゆうこ ●ジャーナリスト、ニュースキャスター。1958年千葉県生まれ。88年上智大学国際学部卒業、2008年同大大学院修士課程修了。大学在学中からキャスターやリポーターとして報道番組に携わる。「ニュースステーション」「CNNデイウォッチ」「ニュースJAPAN」「FNNスーパータイム」などを経て、00年から「FNNスーパーニュース」メーンキャスター。ジャーナリストとして「フィリピン政変」のリポートでギャラクシー賞個人奨励賞を受賞。著書に『以上、現場からでした。』『ひるまない』他がある。