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「初めての感動を与えられるか」
 真鍋大度が語る仕事―1
写真
得意が一つ、は通用しない

仕事の世界で
僕は迷子になった

 「数学が誰よりもできる」。中学、高校を通して全国レベルで上位にいたこともあって、僕は数学で将来の活路を開こうと思い込んでいました。ところが大学の数学科に入ってみたら、周りにはもっともっとできるやつがいた。世間知らずだったと思いましたね。数学には、絵のうまい下手とか、好き嫌いとかというような主観的な判断材料はなく、できるかできないかが客観的に見えてしまいます。

 そして数学の世界の住人は、本当に一日中数学のことしか考えていない。ある教授はビニール袋を持って教室に入ってくるなり、ふと止まったまま20分ほど固まっているんです。何かをずっと考えていたんでしょうね(笑)。

 大学院に進むか就職かという進路選択の時も「数学をやるなら死ぬ気でやらなきゃ駄目だ、人生を捧げる気があるのか」と教授は鬼気迫る勢い。僕は10代から始めたDJや音楽分野で食べていきたい、プログラミングもやってみたいと考えていたので、数学で生き抜く覚悟ができませんでした。

 しかし、就職を選びシステムエンジニアになっても、自分で思っていたほどずば抜けた仕事はできない。退職して次に移ったベンチャー企業は倒産してしまう。数学でもDJでも食べていけない。僕は完全に自分を見失った状態になりました。プータローのようになって、友人宅に居候して飯を作り、小遣いももらっていたりとか(笑)。そういう時は自分一人で立ち直るのは難しい。僕は友人のお陰で、挫折して人生の再設計が必要な事態を乗り越えられました。

いくつかの能力の
組み合わせこそ強い

 自分には何も秀でたものがないとうつうつとしていた日々は、コンプレックスの塊でした。そしてブラブラ暮らしながらネットで調べ事をしていたある日、岐阜県立国際情報科学芸術アカデミーの存在を知ります。デジタルで創る表現制作に引かれ、旅に出るような気持ちで入学するのですが、そこには僕と同じような袋小路にたたずむ人たちがいた。与えられた課題を難なく実現できるプログラミング技術も、表現の優れたアイデア力も持ち合わせている。でも活(い)かせる場がない。思えば時代がまだ追いついていなかったということなのでしょう。

 例えば最近手がけた仕事で、スケートリンク上をフィギュア選手が滑ると、その軌跡が美しい色彩となって氷面に描かれるというアイデアや技術の原型は、10年以上前に学生たちも知っていた。でもどのように発展させるか、依頼してくれる人はいるのかと言えば皆無で、実験室から外に飛び出す手段はなかったのです。

 また、僕は学生時代にパソコンで動かすDJのツールを作りましたが、技術的にそれができても、投資してくれるベンチャー企業はなかったし、特許取得の知恵もありません。担当教授が「惜しかった。君は億万長者になりそこねたな」と笑っていました。

 でも気づいたことがあります。メディアアートを始めデジタル表現の世界は、複合的な能力がなければ参戦できない。プログラミングだけできても、数学的思考だけずば抜けていても形になりません。トップレベルの能力を一つ、ではなく、あるレベル以上の力を組み合わせればいいということです。(談)

まなべ・だいと ●アーティスト/デザイナー。(株)ライゾマティクス取締役。1976年東京都生まれ。東京理科大学理学部数学科、岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー(IAMAS)DSPコース卒業。メディアアート、インタラクティブアート(観客が参加する芸術)、ライブ、広告などジャンルを問わずプログラミングを駆使して様々なプロジェクトに参加。ディレクションを担当した「Perfume Global Site Project」でカンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバルのサイバー部門銀賞など受賞多数。