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「今日は、今日の力を振り絞る」
 安藤桃子が語る仕事―2
写真
目立つからすごいのではなく

映画の現場は
社会の縮図

 映画の助監督時代には「ポジションの責任」ということを強烈に実感しました。映画の現場では監督を中心にピラミッド型の厳密な部隊ができ上がっています。その部隊を包み込むように芸術をつかさどる「映画の神様」という存在がある。その元でみんな自分の仕事を真剣にやり抜いているという感覚が、良い現場には確実にあります。最高の映画を神様に奉納するんだ!というような(笑)。

 「良い現場」には、例えば撮影で役者さんが素足で道を歩く場合、けがをしないように助監督がまず自分で裸足で歩いてみて、ガラスの破片や小石などを地面にはいつくばって一つ一つ取り除くといった仕事がある。「犬のフンが邪魔だ」と言われれば、汚いとかと考える前に瞬時に素手で取り除くなんて当たり前。自分のポジションの中で全力を使って取り組めという、無言の重圧がありました。

 仕事場で明確な目的があれば、人は何をするべきかが分かる。社会は、そういう自分のポジションへの真剣さが機能して、バランスが取れているのではないでしょうか。

 監督も有名俳優もお弁当配りも、支えるスタッフがいるからこそ成立するのが映画の現場です。そこにいると、社会の本質が見えてくるような気がします。

 私は自分が主宰するワークショップで、主役をやりたがる子にはあえて地味に思える記録係をさせます。最初はがっかりするんですが、徐々にやる気を見せるようになる。主役だけでは映画は成立しない、それぞれの役割を知ることが必要だと思います。今の時代、ある意味誰でもネット上でスターになれますが、生涯を通して自分が満たされる、そういう目標を持つことが必要ではないでしょうか。

「その道で一流になる」
という英国の仕事魂

 高校生の頃、留学していた英国でワークエクスペリエンスという仕事体験カリキュラムがあって、私は子どもが好きなので保育園を選びましたが、一日やったらもう翌朝ベッドから動けない。大した仕事量ではなかったはずなのに、社会に出て働くということがどれだけ精神的にも肉体的にも大変かということを体験できました。

 今、日本の若い人が苦労して就職し、期待していたことと現実とのギャップに悩まされ、できないことが自分の能力不足だと思い込んで挫折してしまうのは、本当にもったいないですし、悔しいことです。こうでなければいけない、という社会の強制的価値観に合わせるのではなく、自分自身のポジションを発見することが大事だと思います。「ねばならぬ」は忘れて「なるがままに」の精神で前進できればいいですよね。

 どんなに小さな仕事でも、どうせやるならその道で一流を目指せ、という英国人の考え方に私は感銘を受けました。その仕事を極めるという誇りを持って、技術でも接客でも誰にも負けぬ努力をする。日本人は元々かなり独創的な民族。どんなことがあろうとも独自の発想で復興してきた歴史があります。

 ニッチな分野でいいじゃないですか、もっと自分なりのとんでもない仕事に胸をときめかせたらいいのではないでしょうか。(談)

あんどう・ももこ ●映画監督・作家。1982年東京都生まれ。ロンドン大学芸術学部卒業後、ニューヨークで映画作りを学び、助監督を経て、2010年監督・脚本を務めたデビュー作『カケラ』がロンドンの現代芸術複合センターICA(インスティテュート・オブ・コンテンポラリー・アート)と東京の劇場で同時公開され、全国で上映。父親は俳優の奥田瑛二、母親はエッセイストの安藤和津。自身の小説『0.5ミリ』を原作とし、監督・脚本を手掛けた同名の映画(主演は実妹の安藤サクラ)が11月8日(土)から有楽町スバル座ほか全国にて公開。