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「今日は、今日の力を振り絞る」
 安藤桃子が語る仕事―3
写真
映画文化を死なせるものか

ひとくくりにしていい
人間などいない

 私は子どもの頃から、周囲に順応できないと、問題児扱いにされることが多い人間でした。規則とか世間の習慣とかとは別の、その時々の興味が強烈にあって、自分では無意識のうちに興味を優先してしまうのです。

 集合時間にどこかへ行ってしまい、帰ってこないなんてことは日常茶飯事で、授業中に教科書の言葉が一つ気になると、そこから自分で物語を紡いで夢中になってしまうから、何も聞いていないと叱られることもよくありました。ごく自然な自分の行動が受け入れてもらえない、あるいは親が学校から注意を受けて悩んでしまう。それはとても苦しいことでした。

 「いじめ」「戦争」「介護」などと私たちはひとくくりにしがちですが、その中には数えきれぬほどの個々のドラマが存在します。子どもの頃の私は、そういった枠組みの中にいなければいけないと思い込み、苦しんでいたのかも知れません。

 「就職難」という言葉もそうです。単語化することで一般化し、その言葉の背後が見えにくい。本気で苦しんでいる若者もいれば、適当にやっている若者もいて、それぞれ仕事への考え方も闘い方も違うはずです。私はそこにある個々のリアリティーと向き合い、一人ひとりのドラマを見つめることが映画監督の仕事だと思っています。

 昨今、物事を社会の尺度に簡単に当てはめてしまい、見極めるのが早すぎます。情報伝達がスピード化して、2、3歳ほどの年齢差でも、見ているもの、感じていることに共感しにくい時代になっている。人が完全に理解し合うことは不可能でも、映画や文化を中心に、老若男女が議論してくれたら、そこに新しいつながりの形が生まれるのではないかと私は信じています。

映画のためなら
誰にでも頭を下げる

 今、日本経済は疲弊していますが、そんな中でも映画作りには相変わらず莫大(ばくだい)なお金がかかります。しかも資本力のある大手とは違って独立プロダクションともなれば、後ろ盾がなく、映画作家として妥協しない自分の作品を撮り続けようとすると、資金集めから上映まで走り回ることになります。

 「映画を作りたいので出資してください」とお願いするには、「なぜそうしたいのか」という趣旨をとことん明確に持ち、そこに共感してもらう以外にありません。相手が大企業の社長だろうが誰だろうが、互いに生身の一対一で、ひたすら真摯(しんし)に、純粋な気持ちで向き合うことが基本だと思っています。

 ある時「1億円出すから魂を売れ」、つまり「妥協しなさいよ」と言われたことがありました。こちらは全裸の魂でぶつかっていたので、「じょうだんじゃない! 金で魂は売らない!」と突っぱねました(笑)。

 どんな仕事でも、お願いする時は真摯でなくてはなりません。「雇ってください」「仕事をしたいんです」と頼むのなら、いい仕事をしたい、役に立ちたいという、我欲のないニュートラルな気持ちをぶつけないと響かない。直球で、意気に感じてもらうことが大切なのだと信じています。(談)

あんどう・ももこ ●映画監督・作家。1982年東京都生まれ。ロンドン大学芸術学部卒業後、ニューヨークで映画作りを学び、助監督を経て、2010年監督・脚本を務めたデビュー作『カケラ』がロンドンの現代芸術複合センターICA(インスティテュート・オブ・コンテンポラリー・アート)と東京の劇場で同時公開され、全国で上映。父親は俳優の奥田瑛二、母親はエッセイストの安藤和津。自身の小説『0.5ミリ』を原作とし、監督・脚本を手掛けた同名の映画(主演は実妹の安藤サクラ)が11月8日(土)から有楽町スバル座ほか全国にて公開。