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「今日は、今日の力を振り絞る」
 安藤桃子が語る仕事―4
写真
自分から摩擦を起こそう

他人と擦れ合うのは
成長のプロセス

 私は、日本人ほど個性的でクリエーティブな民族はいないと感じています。歴史的に見ても、独自に生み出してきた文化や技術がどれだけ外国に影響を与えてきたことでしょうか。戦後の復興も、やはり奇跡のような能力の開花でした。他国のモノマネがうまいなどと自虐的に思っているけれど、実はそうではなく、土台に強い個性と歴史があるからこそ外からのアイデアをミックスして生まれ変わることができる。それこそが「新しいもの」の生み出し方です。

 しかしここ最近、日本人が仕事に向かっていく姿に元気がない。高校を卒業したら大学に行くのが当たり前、大学を出たら就職するのが当たり前という思い込みが、それぞれが持つ創作力の強い民族的才能をすごく狭めている気がします。就職した人もまた、当たり前に働けばいいと思っていますが、本当は「当たり前」「ねばならぬ」などといった決まったものはないはずで、周囲との摩擦もなく、抵抗することもないまま流れに乗ってしまうと「自分」というものがどんどん消えてしまいます。

 自分はどんな人間で、何ができるのか、その本質を見つけるには、人と違う意見があるならば逆らい、痛い思いをし、怒りを持ちながら、自分が何を感じ、どう考えているのかを知っていくしかありません。「他人は己が見えるようになる鏡」であり、摩擦は、人が成長するために絶対に必要なプロセスなのです。握手やハグも、極端ですがビンタも、物理的な接触だって精神的なことを教えてくれます。

追い詰められた先は
落とし穴ではない

 何かしらの摩擦が大事だと言いつつも、けんかや争いは嫌なものです。でも、実はそういう時、私は途中から冷静になって相手の言葉を記憶にとどめ、怒ったり、傷ついたり、失恋して号泣していても、メモをするんです。きれい事ではないから、自分も普段思っていないことを胃の腑(ふ)から吐き出すように書き出して、自分が覆い隠していた本音と向き合うんですね。

 仕事で問題に突き当たった時も、とりあえず丸く収めるより、意見の違いをとことん外に出してみようとします。理性を通り越して感情的になり、もうここまでかと追い詰められても、互いの本音が分かると何とか道が見えてきますし、人生、思い通りにいかないことがほとんどなのだと、紆余曲折(うよきょくせつ)を面白く感じます。映画が国を超えて受け入れられるのは、人間のリアリティーを表現するからですし、人生をこんなものだろうと見切ったりしないで、どのような修羅や絶望を経ても、その向こうに光があることを伝えるからだと信じています。

 人は誰もが「必要とされたい」と願って生きていると私は思うんです。仕事でもそれは変わらない。私にとっては自分の作品を見てもらうことが喜びですし、適材適所で正しく自分が役に立っている時の充実感は何物にも代えがたいのではないでしょうか。この適材適所の仕事へたどり着くために、もっと自分の本音を知り、できることを知り、ここだという場所を突き止めて欲しい。だってそれは、あなたにしか分からないことだから。(談)

あんどう・ももこ ●映画監督・作家。1982年東京都生まれ。ロンドン大学芸術学部卒業後、ニューヨークで映画作りを学び、助監督を経て、2010年監督・脚本を務めたデビュー作『カケラ』がロンドンの現代芸術複合センターICA(インスティテュート・オブ・コンテンポラリー・アート)と東京の劇場で同時公開され、全国で上映。父親は俳優の奥田瑛二、母親はエッセイストの安藤和津。自身の小説『0.5ミリ』を原作とし、監督・脚本を手掛けた同名の映画(主演は実妹の安藤サクラ)が11月8日(土)から有楽町スバル座ほか全国にて公開。