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「胸にある志に着火しませんか」
 白木夏子が語る仕事―3
写真
中米の貝が、輝きの始まり

私のビジネス発想は
業界の非常識

 資本金は多くなく150万円、実績もなし。主に世界中の発展途上国の現地から、搾取するのではなく、働く人々に正当な賃金を保証してくれる団体やNGOから素材を買いつけ、人と社会、自然環境に配慮する美しいジュエリーを作りたい。それが私のビジネスプランでしたが、それはまだ日本では実現していない社会貢献に根差したジュエリーの分野でした。

 かつて見た映画『ブラッド・ダイヤモンド』の衝撃があまりにも大きかったことも根底にあります。ダイヤの原石を発掘する人々の悲惨な待遇、そのダイヤを搾取し闇取引で売りさばき、高額なジュエリーとして市場を支配する仕組み。映画のストーリーはフィクションですが、幸福な花嫁の指に輝くダイヤの背景が、採掘する現地の人々の犠牲で成り立っている現実は一部存在しています。私は、その搾取のブラックボックスに取り込まれたくありませんでした。

 でも、ジュエリー業界のプロフェッショナルたちに直取引のビジネス構想を相談すると、誰もが「絶対に無理だ!」と言う。現地で採れた素材が、どのくらいの数の仲介業者を通してメーカーに届くか、複雑すぎて分からないのが現実だと。理想は素晴らしいけれど、非常識にもほどがあると真剣に諭してくれるのです。

 それでも私は、やっとたどり着いた目標である、途上国の自然素材でジュエリーを作るという道を諦めることはできませんでした。資本金は起業準備とホームページ制作などであっという間に底をつきましたが、それでも「やりたい気持ち」がしぼむことはありませんでしたね。

周りを巻き込み
頼る勇気がいる

 ビジネスの下準備をして起業したものの、当初資金がなくなってしまってからは、親も心配するほどの赤面症で人見知りだった私が、「新しい仕事に出資してください」と知人を頼りました。その時学んだことが二つあります。一つは会社を経営するなら、資金を投資してもらう覚悟をいつも持つこと。そしてもう一つは、その仕事に一番情熱を燃やす自分で在り続けること。人は、その経営者の本気に投資してくれるものだと体験し、必死だった私は本当にありがたく思いました。

 私の初めての途上国からの素材取引は、起業する少し前から交渉を始めていた、サンゴ礁で有名な中米ベリーズの特産品ウィルクス貝です。留学や仕事で知り合った、志を同じくする仲間の協力が大きかった。現地では浜辺に打ち上げられるありふれた貝ですが、丁寧に研磨すると艶(つや)のある美しい素材に生まれ変わります。そして次は、ルワンダからやってくる食用の牛の角。内戦や貧困で親を失ったストリートチルドレンたちの自立を目指して、角の研磨工場ができたと聞いたからでした。

 しかし、何度も足を運んで確かめた現地の素材加工技術はまだまだ未熟で、貝も牛の角も一応磨いただけという素朴なもの。私が求めるジュエリー素材の質の高さには遠く及びませんでした。フェアトレード(公正貿易)では、現地素材をどのように市場で魅力ある商品にするかにかかっています。現地の人々に、そのクオリティーを肌で分かってもらうこと。そこからが長い時間の始まりでした。(談)

しらき・なつこ ●(株)HASUNA代表。1981年鹿児島県生まれ、愛知県育ち。短大を卒業後、2002年ロンドン大学キングスカレッジにて開発学を修め、国連人口基金などのインターンや投資ファンド会社を経て09年から人と社会、自然環境に配慮したジュエリーブランド事業を展開。11年世界経済フォーラム(ダボス会議)が選ぶ日本の若手リーダー30人に選出される。著書に『世界と、いっしょに輝く』『自分のために生きる勇気』などがある。