メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

ここから本文エリア

朝日新聞デジタル > 転職 > 仕事力

朝日求人ウェブ
朝日新聞に掲載された求人情報
朝日新聞に掲載された求人情報
会員登録   会員登録すると直接応募やwebメールでの
送受信など色々な機能が利用できます。
ログイン  
パスワードを忘れたら ヘルプ
ご利用にあたって お問い合わせ
 
「人は、自分で思うより踏ん張れる」
 山口絵理子が語る仕事―1
写真
メイド・イン・バングラデシュ!

ホコリだらけの
工場で見た「夢の種」

 私は大学時代に、米州開発銀行のインターンとして採用され、予算戦略本部という部署で働き始めました。英語もあまり自信のない私の周りは、数カ国語を繰る世界のエリートたち。多額の援助金を途上国に届けるため忙しくパソコンに向かっていました。そこでふと芽生えた私の疑問は「この巨額の援助は途上国の本当に必要な人たちに届いているのか」ということ。どうしても自分で確かめたくなり、「アジア 最貧国」と検索して出てきたバングラデシュへ向かいました。

 現地のダッカ空港に着くと、いきなりお金を求めて人が寄ってきます。貧しい身なり、鼻をつく臭い。あの援助金はどこへ行ったんだ、知らなきゃ帰れないと思った私は、この地の大学院に入学を決め、2年間の一人暮らしを始めました。やがて、援助金は政治家の懐に入り、人々は貧しさに苦しむばかりであることがはっきりと分かり、次は仕事の現場を知るため、現地の日系企業のインターンとなって、ジュート工場で工員たちと働き出したのです。

 ジュートは麻の一種の天然繊維で、工場ではコーヒー豆の袋のような製品を作っていました。バングラデシュとインドを合わせてシェアは世界の90%。ホコリが舞う劣悪な大工場で、黙々と非人間的な労働に従事する人々の貧しさ。でも彼らには、バイヤーの非情な要求に一生懸命に応える様子が見えました。「この人たちにチャンスがあれば、もっといいモノを作れる」。私はそんな可能性にごく小さな「夢の種」を抱きました。

街で出合った
ジュートのバッグ

 具体的に何をするのか、形にならないまま考えてばかりいたある日、街のお店で一つのバッグに惹(ひ)かれました。何だかボロボロですが素材がとても魅力的で、その素材のジュートは、現地では「ゴールデンファイバー(黄金の繊維)」と呼ばれている。その時、これだ、と直感しました。特産のジュートを使って、本当に国際競争力のあるバッグをバングラデシュから世界へ展開しよう。「貧しい国の人がかわいそうだから買って」などという姿勢はみじんも持たず、日本の女性が「ステキ!」と喜んで手にするバッグを作り、タグをひっくり返して初めて「メイド・イン・バングラデシュ」だと知られるものを。

 現地の経済的な自立を実現したい。それが自分の使命であることも確信しました。でも、まず誰がバッグを作ってくれるのかさえ分からない。私は自分でバッグのデザインをスケッチブックに描き、アルバイトで稼いだわずかな全財産を持って何十軒ものバッグ工場を訪ね歩きました。まず「お前みたいな小娘が、笑わせるな」と追い出されます。「じゃあ、サンプルを作ってみよう」と言われ、喜んでサンプル代を渡すとそれ以降は音信不通になってしまいました。

 でも、いたのですね。「君の夢に懸けてみよう」と受けてくれた工場主が。ところがいざ製品化となると、私がイメージする技術とは全くかけ離れている。残念で悔しい気持ちと同時に、「マダム、マダム」と一生懸命に作ってきてくれる彼らに、何度も何度もダメ出しをするつらさ。それでも初めて完成した160個のジュートバッグに、私は涙が止まりませんでした。(談)

やまぐち・えりこ ●(株)マザーハウス代表取締役兼デザイナー。1981年埼玉県生まれ、慶応義塾大学卒業。在学中ワシントン国際機関でインターンを経験する。バングラデシュBRAC大学大学院開発学部修士課程修了。2006年マザーハウス設立。バングラデシュの素材でバッグを現地生産し、日本などでの販売を軌道に乗せる。近年ネパールでの生産も手がける。現在、日本と台湾で計20店舗を展開。著書『裸でも生きる −25歳女性起業家の号泣戦記−』『裸でも生きる2 −Keep Walking 私は歩き続ける−』ほか。