メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

ここから本文エリア

朝日新聞デジタル > 転職 > 仕事力

朝日求人ウェブ
朝日新聞に掲載された求人情報
朝日新聞に掲載された求人情報
会員登録   会員登録すると直接応募やwebメールでの
送受信など色々な機能が利用できます。
ログイン  
パスワードを忘れたら ヘルプ
ご利用にあたって お問い合わせ
 
「人は、自分で思うより踏ん張れる」
 山口絵理子が語る仕事―3
写真
途上国という学びの場

答えは全て途上国の
人に教えてもらう

 バングラデシュの特産品であるジュート(黄麻)や牛革を使ったバッグ。その生産を始めましたが、現地の作り手が慣れないうちは不良品が出るのもやむを得ません。見たことのない品質のバッグを手がけるのですから。それに私たちは、効率を求めてバングラデシュに生産の拠点を持ったわけではなく、世界から愛されるバッグを彼ら自身の手で作って欲しいという目標があります。だから、流れ作業の一部分、例えば革ののり付けならのり付けだけ15年というような職人ではなく、全くスキルがゼロのフレッシュマインドを持つ人を作り手として採用してきました。

 そしてその一人ひとりがのり付けをし、革を折ったらミシンで縫って、縫ったら立体にして製品まで完成させる方式を取ってきたのです。一つの技術をマスターしても、また次の新しい技術習得が待っていて努力が必要だし、一人前になるまでに3年ぐらいの時間を要することも多いですね。でも、このシステムが大切だと思います。「自分がこのトートバッグの担当者である」と検品ノートにサインをする、その責任感がやる気につながっていくからです。

 どの工程でも、私が共に学ぶことはたくさんあります。例えば日本のバッグ製作では、革のカッティングに包丁のように鋭利な刃物を使いますが、バングラデシュではほとんど使いません。彼らはハサミにすごく慣れていてうまい。それなら彼らのやり方で、ハサミによるカッティングが上手になってもらえればいいですよね。ミシンがけが本当にすごいとか、さまざまに優れた人がいるので、私が技術指導するなんてあり得ない。

 「こうやりたいのだけど誰か教えて」と、しょっちゅう革を手にして一日中工場内をバタバタと走り回り、時にはトイレの前で待ち伏せしたりもしますから(笑)。

チームでありたい

 工場の彼らから見たら、私はかなり危なっかしい存在なのでしょうね。あんなに必死で「教えて!」を連発しているし、これは本気でサポートしないとまずいかも知れない、気が抜けないぞと感じたのでしょうか。ただただ、いい製品を作るためにと汗だくになって走り回っているうちに、いつのまにか不良品の数が減っていきました。

 私は、自分の工場のこのやり方しか分かりませんが、それでもインドやネパール、バングラデシュなどの途上国で日系企業さんを訪問すると、工場では徹底して「我らが日本の技術を教える」という指導が圧倒的です。そして残念なことにうまくいかず、現地の人間は使いづらいと言い切って2年ほどで撤退してしまわれることも多い。それは早すぎると、悔しい気持ちに襲われます。

 それぞれの考え方があると思いますが、例えば片言の現地語を覚えて、同じご飯を食べたら、もっとよく彼らの可能性を理解できたかも知れません。現地の人を一くくりにして、一方的に「自分たちが優れているから、あなたたちはそれを習い覚えればいいのだ」と押し付けるのは、おごっていないでしょうか。

 現場に溶け込み、仲間になって、一緒にいいものを作るということ以外は私にはできないのですが、それも一つの仕事力だと思うのです。(談)

やまぐち・えりこ ●(株)マザーハウス代表取締役兼デザイナー。1981年埼玉県生まれ、慶応義塾大学卒業。在学中ワシントン国際機関でインターンを経験する。バングラデシュBRAC大学大学院開発学部修士課程修了。2006年マザーハウス設立。バングラデシュの素材でバッグを現地生産し、日本などでの販売を軌道に乗せる。近年ネパールでの生産も手がける。現在、日本と台湾で計20店舗を展開。著書『裸でも生きる −25歳女性起業家の号泣戦記−』『裸でも生きる2 −Keep Walking 私は歩き続ける−』ほか。