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「人は、自分で思うより踏ん張れる」
 山口絵理子が語る仕事―4
写真
フェアな目で人と接したい

人も、自分も
決め付けたらそこまで

 文化や宗教、考え方や暮らしまで極端に違う国へ行って、よく何年も現地の人と仕事を続けられますね、と不思議がられることがあります。痛い目に遭っても懲りないのですかとか(笑)。でも、私にとってはそれこそが今の仕事を続ける楽しさですし、どこの国にもいい人も悪い人もいる。最初からこの人はこう、この国の人はこうと絶対に決め付けたくはありません。

 むやみに疑心暗鬼になって過剰に警戒するより、たとえだまされたり裏切られたりしても、それは自分が選んだリスクで、「痛みも全て込み」で信じたのだからと思えば精神的に健やかでいられます。

 本気でこちらが信じ始めると相手は思わず心を開いてくれたり、気付かなかった個性を見せてくれたりしますが、私はその変化を見るのが仕事をする楽しみの一つだと考えます。バングラデシュの現地工場では、少数民族の子が入ってくると「こういう出自の子なら、これしかできないだろう」と簡単にくくられ、周囲は仕事を限定しようとする。でも私は、この子はできるのではないかと信じ、何かのリーダーに抜擢(ばってき)してみるとグングンと伸びていきます。

 私たちは、今までの少ない経験と染み付いてしまった習慣だけで可能性を決め付けがちですが、そんな枠組みに何の意味があるのか。途上国で工場を造ると無謀だとか非常識だとか言われ、失敗もし、泣くことも多かった私ですが、それでも心の奥底では「もう一度信じてみよう」と思い直し、そうすると意外に踏ん張れることに気付きました。

 ただ、やる気や感情論だけではどうしようもないから、チームみんなの知恵を出し、きちんと頭を使って解決策を出そうとすれば、どこにでも解決の糸口はあると思っています。人も自分も、まだ力を持っていると信じることが、私の仕事観です。

現場に転がる光る原石
を見つける楽しさ

 かつて私が国際機関に勤め違和感を抱いたのは、パソコンの前に座って資金援助の作業をすることでした。そこには「リアル」がなかった。その後、途上国に飛び出してバングラデシュを始めネパールやインドネシアなど未知の世界を訪れてみると、本当に知らないことばかりなのです。現地で美しい布を織る織り子さんたちは、確かに昔からの生活を続けているけれど、お金のためだけじゃなく歌うように布を織っていて、ある一面では最先端な生活をしているようにも思いました。

 現場に行かないと見えない小さな光や可能性に出会えた時の、ワクワクする感じは病み付きになります。その土地の美しい工芸や素材を生かしたら一体どんなものが作れるだろうかって。デザインは共同作業。一番大事なのは温もりや温度感があること。一夜限りでできるものではありません。現地の言葉や文化を理解し、本当の意味で信頼関係を築くことで始められる。

 夢は、様々な途上国に「家」だと思えるような工場を造ることと、現地の素材を生かしたものづくりで現代社会の中で温もりを感じられる商品を作ること。自分たちの店舗で、お客様にも家にいるような温かさを感じて頂けたら。数字が目標ではなく、そんな温もりあふれるブランドでありたいのです。(談)

やまぐち・えりこ ●(株)マザーハウス代表取締役兼デザイナー。1981年埼玉県生まれ、慶応義塾大学卒業。在学中ワシントン国際機関でインターンを経験する。バングラデシュBRAC大学大学院開発学部修士課程修了。2006年マザーハウス設立。バングラデシュの素材でバッグを現地生産し、日本などでの販売を軌道に乗せる。近年ネパールでの生産も手がける。現在、日本と台湾で計20店舗を展開。著書『裸でも生きる −25歳女性起業家の号泣戦記−』『裸でも生きる2 −Keep Walking 私は歩き続ける−』ほか。