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「ネット社会の幸せって何だ?」
 川上量生が語る仕事―1
写真
「効率教」に心酔するな

人間を均質化していく
インターネットの怖さ

 米国では、どの都市に行っても同じチェーン店ばかりが並んでいますよね。見慣れたファストフード、レストラン、マーケット、ドラッグストアなどが中心街を占拠していて、その土地ならではというものはほとんど見当たらない。同じことが世界中で起きていて、それを加速させているのがインターネットです。

 グローバリゼーションは、ビジネスの世界で勢いが激しく、日本も世界レベルの効率化を目指して、もれなく躍起になっている。しかし、ただ一つの答えを追求することって人間を不幸にする。それは、人としての自然な感情を押し殺していくものになると思いますね。

 例えば、利益の極大化を唯一のゴールとするなら、多分、全ての会社の経営方法は同じ形に絞られていく。利益極大化だけが正しい企業の道なら、Aさんが社長であろうがBさんであろうが違いはなく、人間の体を借りた「利益追求の論理」が経営をしているだけ。本来なら違う個性の人間が、試行錯誤しながら会社のかじを取るべきなのに、ただ一つの論理に頭を乗っ取られてしまっているんです。

 また若いビジネスマンの多くは、もう効率化を信じきっています。仕事の面白さを模索するより、せっせと自分を周囲と同じ効率人間のクローンにしようとしている。上司も「効率を考えろ!」と叫ぶから、コンピューターをぐんぐん使いこなし、「デジタルネイティブ」などと自負して効率化へと突っ走る。それでは仕事人生が硬化してつらくなりますよ。訳の分からないこと、不合理なこと、悩むことが次々と起きて仕事の手が止まっても、「効率」に振り回されてはならないと思うんです。

僕なりのゲリラ戦

 それなら、なぜ僕はインターネットを使った事業をしているのか。それは、インターネットは道具なので、人間臭い楽しみ方ができると考えているからですね。世界中が効率化へ突き進むなら、僕は盛大に無駄な広場を作ってやろうと。

 今、ネット社会は進化して勢いがあるから新しいことが美徳という価値観で覆われています。ただ僕は、ネットの掲示板などで、誰かが書いた意見に対して「過去ログを見ろ」と切り捨てるように言うヤツがひどく嫌いです。それは「とっくに議論したことだから、もうそんな古いことをグダグダ言ってないで次の議論に進め」という非難を浴びせているからです。けれど新しいことしか話してはいけないって、人間には非常に過酷なことで、これも効率化の価値観の一つなんですね。

 僕たちは、春になって桜が咲いたら「桜がきれいだね」と言う。毎年毎年、みんなが何度も何度も桜がきれいだと言い、そういう無駄を繰り返して生きていくものですよね。古い意見だって、人がさんざん言ったことだって、たった今自分が感じた気持ちを許されるのが幸せな社会だと思う。だから僕は、ネットの動画画面の上に見ている人がどんどん意見を書き込めるサイト「ニコニコ動画」を作り、「効率を追求」するネットのルールの真逆に立ちました。

 何か起きたら、そこに行くとみんなが集まって井戸端会議のようにガヤガヤやっている。そういう「楽しさ」を仕事の軸に据えています。(談)

かわかみ・のぶお ●(株)KADOKAWA・DWANGO代表取締役会長、(株)ドワンゴ代表取締役会長。1968年愛媛県生まれ。京都大学工学部卒業。ソフトウェア会社勤務を経て97年にドワンゴ設立、2003年東証マザーズ上場、04年同第1部に上場変更。11年スタジオジブリ入社、鈴木敏夫氏の見習いを経験。主な著書に『ルールを変える思考法』『ニコニコ哲学 川上量生の胸のうち』、監修本『角川インターネット講座04 ネットが生んだ文化 誰もが表現者の時代』などがある。