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「ネット社会の幸せって何だ?」
 川上量生が語る仕事―2
写真
日本語は「壁」ではなく、強み

競争するのではなく
新しい居場所を探す

 コンピューターという道具を「効率強化」に使わない。それが僕の立ち位置です。世界中の大きな流れに逆行していますけれど(笑)。なぜなら、効率化もグローバリゼーションも、答えが一つしかないものを追求していき、答えを見つけてしまったら、それ以外のものはみな間違いだとする社会ですよね。その考え方は人を不幸にするし、正しくないと思っています。

 僕は社員に「人のやらないことだからやろう」「誰もいない場所へ行け」と言い、自分の仕事は新しい市場を作るマーケティングだと位置づけ、まさに効率化と反対の方向へ進もうとしているのです。

 高校生の頃に初めて家庭用ゲーム機が出現し、僕もやっぱり夢中になりましたが、それでも、ゲーム以外のいろいろな現実へ好奇心を張り巡らせていました。小学生の時から本も外遊びも面白かったし、どんな人間にも興味を持つ子どもで、例えば、電車の前の座席ですごく不幸そうな顔をして座っているおじいちゃんがいると、この年齢になってこんなに難しい顔をしているなんてどんな人生を送ってきたのか、知りたくて仕方がなかった。

 それは、自分や自分の周囲にいる人とは違う人生を生きる人が、実はたくさんいて、その多様性に関心があったからで、今もそれは変わりません。だから僕の企画はいつも、世の中の流れの「次」を狙うのではなく、全くかけ離れた「別」を狙うので、社員には無謀に映るらしい。

 新ゲームや着メロの開発、そして「ニコニコ動画」といった新しいものの開発でも、会議で「こんなことやってみようと思うんだけど」と提案すると、その瞬間からみんな凍りついていました(笑)。全員から「どうやってこの無謀な案件の担当から逃げようか」と考えているのがビシビシと伝わってくる。だけど本当に新しい仕事って、「それ大丈夫か?」という違和感から始まるのです。

日本が持つ独自の言葉
と文化で世界へ

 ゲームの世界には、グローバルな対戦をしてランキングを競う人々がいます。全世界で1万位でも1万1千位でもすごい実力ですが、ただ一つの目標に向けて競争する世界では、一人の勝者とその他の敗者しか生み出さない。だからゲームのようなエンターテインメントの場合は、微差に振り回されず、友達の中で俺が一番だと楽しめばいいのではないか。

 例えば、アフリカのサバンナで飢えたライオンに陸上選手が襲われたとする。1位は100メートル10秒で2位は10秒2の記録を出したトップ2人だけれど、でもその差は関係ないですよね、どっちも餌食になるに決まってる(笑)。

 今、グローバルネットワークが席巻する中で、政府の保護政策もないまま、でも日本のネット企業はとても健闘しています。それは日本語のおかげ。「世界は英語で動き、日本語は壁だ」と言う人もいるけれど、実は、その日本語によって文化も仕事も世界の均質化から守られている。もちろんグローバル化は進むけれど、勝てない戦いに悲観するのではなく、独自の言葉と文化を持つ僕たちが、日本の素晴らしさの発信側に回る時でしょう。(談)

かわかみ・のぶお ●(株)KADOKAWA・DWANGO代表取締役会長、(株)ドワンゴ代表取締役会長。1968年愛媛県生まれ。京都大学工学部卒業。ソフトウェア会社勤務を経て97年にドワンゴ設立、2003年東証マザーズ上場、04年同第1部に上場変更。11年スタジオジブリ入社、鈴木敏夫氏の見習いを経験。主な著書に『ルールを変える思考法』『ニコニコ哲学 川上量生の胸のうち』、監修本『角川インターネット講座04 ネットが生んだ文化 誰もが表現者の時代』などがある。