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「ネット社会の幸せって何だ?」
 川上量生が語る仕事―4
写真
古い仕事観を仕切り直そう

掘りたい穴を掘れ

 僕は、若い人に対して仕事への具体的なアドバイスをほとんどしません。とくに、グローバル社会や競争社会の、効率を目指す大きな流れに乗ることを良しとしていないので、ネットビジネスを仕事としてだけではなく、人の喜びのためにやりたいと考えている人間です。

 今の日本は衣食住が豊かに満たされていますよね。人間も動物だから危機の時には猛然と闘うけれど、こんなふうに穏やかに暮らせる日々なら、それなりの個人の多様な生き方や仕事観が肯定されていいと思っています。だから、若い人たちに対して誰かれ構わず「もっとやりたいことを探して努力しろ」という社会的なプレッシャーを与えるのは、もはや間違いではないでしょうか? こんなに満たされているのに、やりたいことを探せと言われたら、若年者はそれを素直に信じ、見付けられない自分が悪いと思ってそこに不幸が生まれてしまう。その時代錯誤に、そろそろ気付かなければならない。

 では、どうするか。肩に力を込めて「仕事としてやりたいこと」と限定するのではなく、心引かれることや楽しい時間に素直になって、そこを掘って掘って進んでいけばいいのではないか。既存の価値観とは違う考え方が、人に求められ、稼げる仕事になっていけばいい。現にそうやって世界を席巻している日本のカルチャーがあるわけで、そこには、その豊かさを支える土壌があるのだと思いますね。

ブラック企業かどうか
価値は見極められる

 今の就活生たちの間ではびこっている価値観に、「就職というのは自分の人生を切り売りすることである」というのがありますね。残業はどれぐらいあるのか、時間外手当はきちんと支払ってくれるのか。つまり、自分の時間を搾取されるのは絶対に嫌だと思いながら勤め先を探している人が、とても多い。「仕事は食べるためにやる。自分に対してお金を払ってくれる会社があるなら、その中から選ぶ」という割り切った考え方は、基本的に正しい。

 しかし、その上で十分なやりがいも与えて欲しいと言うのなら、それは矛盾していると僕は思う。能力と時間をきっちりと給料に換えるなら、会社のどんな仕事でもやらなくてはならない。

 逆に、自分がやりがいを感じる仕事が分かり、その仕事で自己実現に近付くなら、労働条件は譲ることもできるのではないだろうか。もっと経験したい、もっと教えてもらいたい。その自分の気持ちに真剣に応えてくれている会社か、ただ、その熱意を都合よく使っている企業なのか。あなた自身が見極めればいいのです。ゲームやインターネット関連の会社などでは、本人の興味がとどまることを知らず、誰もいなくなったビルに遅い時間まで居残る人も多い(笑)。

 仕事観の物差しは「本当に自分にとって面白いのか?」という問いに根差していると思いますね。例えばおしゃれして歌舞伎見物に押し寄せる中年女性たちは、間髪入れずに顔を輝かせて「面白い」「楽しい」と答えるでしょう。人が何と言おうと、この面白さは譲れない。リアル社会でもネットの中でも、そのように愛される仕事を目指すのが幸せではないでしょうか。(談)

かわかみ・のぶお ●(株)KADOKAWA・DWANGO代表取締役会長、(株)ドワンゴ代表取締役会長。1968年愛媛県生まれ。京都大学工学部卒業。ソフトウェア会社勤務を経て97年にドワンゴ設立、2003年東証マザーズ上場、04年同第1部に上場変更。11年スタジオジブリ入社、鈴木敏夫氏の見習いを経験。主な著書に『ルールを変える思考法』『ニコニコ哲学 川上量生の胸のうち』、監修本『角川インターネット講座04 ネットが生んだ文化 誰もが表現者の時代』などがある。