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「『よく生き、よく死ぬ』課題を探せ」
 佐渡島庸平が語る仕事―1
写真
失敗を増やしたい

社内の先輩の仕事こそ
最初の学び

 仕事とは、先輩を意識して盗み見ることから始まると思います。出版社にいた時、先輩の仕事を観察していて「何でこの人と連絡を取ってるのかな」と思っていたら、その人に関わることをテーマにしたマンガが数カ月後には誌面に載っていた。会社や先輩から紹介された人だけと会って仕事をするのではなく、自分で興味がある人に連絡し、仕事を生み出していいのだと気づかされました。

 そうすると先手が打てるようになるのですね。上司から仕事を振られるのではなく、自分から「よしコラボするぞ」とまず相手企業を口説いてしまい、それで自社のみんなも巻き込んでいく。そうやって、相手企業と自社で一つでも互いにハッピーな仕事が成立すると、自然と次の紹介へつながっていきます。僕の場合は、そのきっかけからどんどん仕事が増えていきました。

 若い社員によく「もったいないぞ」と言っていました。みんな入社して1年もすればすぐ忙しくなるし、後輩も入ってくるから、細かな事務作業をやらなくなる。しかし、例えば受信したファクスを取りに行って配ると、誰がどれぐらい外部とやり取りしているかがはっきりと分かる。電話の取り次ぎもそうです。今は電子メールが増えましたが、それでもアンテナを張っていれば見えることは多い。

 自分から動くと失敗もします。プライドが傷つくのが怖いならじっとしていればいい。でもそれでは先に進めない。若いうちにさっさと動き、怖さとはこれぐらいのものかと経験してしまえばいいのです。

仕事が評価されつつ
組織と合わなくなっていく

 どこの会社に属していても同じだと思いますが、振り返ると僕も、会社には損をさせてはいけない、と考えて仕事をしていました。会社から「損はするな」という明確な命令があるわけではないけれど、何となくみんなそういう気持ちで仕事をしてしまい、自分で自分に箍(たが)をはめてしまう。

 ヒット作を出して、社内ではやりたい企画を自由にやらせてもらえる状況でした。だから大胆な企画を思いついてもいいはずなのに、小さくまとまり始めていた。僕は自分にかけてしまっている箍をどうすればはずせるのか分からず、もがいていたのです。

 組織の一員としては、スタンドプレーではなく、周囲の了解を得ながら企画を進めてきた人間です。でも、了解を取るのに時間がかかり過ぎると感じた頃から、組織の仕組みが時代に合わないのではないかと気づき始めました。

 今になって更に分かるのですが、失敗の数というか、挑戦の数をもっと増やしていかないと何が正解なのか分からない。やってみて違ったということを多く繰り返せば正解に近づける時に、頭を集めてじっくりと検討していては間に合わないというスピードの時代なのです。組織の中にいると、失敗の数が少ない方が評価が上がりやすい。その価値観から抜け出したかった。

 それで、行き先も全く分からない状態だったのですが、組織の支えがなくてもできるはずだと自分を鼓舞し、信じ、独立することにしました。

 組織の外に出て、自分が理想とするスピード感でやってみるか、と起業を決めたのは入社して10年目。仲間3人でのスタートでした。(談)

さどしま・ようへい ●(株)コルク代表取締役社長。1979年生まれ。東京大学文学部卒業。2002年(株)講談社に入社、モーニング編集部に所属。マンガ『バガボンド』(作者:井上雄彦)、『ドラゴン桜』(同:三田紀房)、『働きマン』(同:安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(同:小山宙哉)、小説『モダンタイムス』(同:伊坂幸太郎)、メッセージ本『ドラゴン桜公式副読本 16歳の教科書 なぜ学び、なにを学ぶのか』などの編集を担当。12年に講談社を退社し、作家のエージェントとなる現会社を設立。