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「『よく生き、よく死ぬ』課題を探せ」
 佐渡島庸平が語る仕事―2
写真
市場の先頭を目指す

圧倒的な変化のスピード
をどう捉えていくか

 この数年の間に、ごく日常的な、細かい生活習慣や感覚が瞬間的に変わってきています。例えば電車の自動改札機でICカードを使わない人を見ると意外に感じるほど普及したし、無料通信アプリの「LINE」も4年前にはありませんでした。ウェブ上ではわずか2、3年で、ビジネスの勢力ある人が移り変わっていきます。

 以前のように、ゆっくりと人の失敗から学び、それを分析して成功を模索する方がよかった時代とは違って、今はそれでは間に合わない。自分がビジネスを始める前に市場が形成されてしまい、もう参入すらできなくなります。だから仕事がうまくいくかどうかは、先頭を走り続ける覚悟を持って、それを楽しめるか、にかかってくるでしょう。

 このスピードの変化の中で、起業への思考も変わってきています。10年前の僕なら、会社設立の仕組みや設備の大変さを負担に感じて独立はしなかった。でも今はシェアオフィスもあり、ほとんど費用のかからない独立が一般的になりました。

 更にウェブの時代だ、と痛感するのは、昔は会社の信用度が資産や不動産などで測られていたけれど、現在は、その起業家のフェイスブックやツイッターを見れば、個人として信用できるかどうかが一瞬で分かってしまうことです。人となりが現れ、友人とのつながりまで可視化ができてしまう。これからもっといろいろなツールが出てくるでしょうから、若い人たちは仕事をする上でも、自分は丸裸になってしまうということを分かった方がいい。ただ、そのお陰で信用をためられる時代になったとも言えますね。

全ての物事、体験で
自分の考えを確かめよ

 生活のスピード化が激しくなると、忘れたり、気にかけなくなったりすることが増えてきます。僕だって1年前に聴いていた音楽を思い出せないくらいです。だから今は、どんなことにでも自分の感想や考えを持った方がいい。良いと思った、悪いと思った、何も感じなかったというので構わないのですが、何かに対して自分の心はどう反応したのか、ということを意識する癖はこれから重要となります。

 何でも考える癖がついてくると思考が深まってくると思います。実はほとんどの人が、考える癖もなければ、自分が他人の意見を借用しているのか、持論なのかも分かっていない。若いうちは親や学校などに守られ、その後は検索機能に頼りますからね。仕事で成長するために、ささいなことでも自分に「どう思う?」と問いかけてみる。

 僕は親から「食べ方が汚くても、社会に出たら誰も指摘しないよ」とよく言われました。これは「『思考の仕方が汚い』としても誰も指摘してくれない」ということにつながるんです。思考の仕方が借用だったり、自分の意見が雑だったりすると、誰も指摘せずに去っていくだけということが起こりえます。何か事件が起きた時に、状況をよく知りもしないでウェブ上にうかつな書き込みをすると、永遠に消せないことになる。たとえ日本語で書いても、たちまち翻訳され世界に向けてオープンになってしまいます。

 市場の先頭を走るためには、考え抜く努力と、信用が武器になるのでしょうね。(談)

さどしま・ようへい ●(株)コルク代表取締役社長。1979年生まれ。東京大学文学部卒業。2002年(株)講談社に入社、モーニング編集部に所属。マンガ『バガボンド』(作者:井上雄彦)、『ドラゴン桜』(同:三田紀房)、『働きマン』(同:安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(同:小山宙哉)、小説『モダンタイムス』(同:伊坂幸太郎)、メッセージ本『ドラゴン桜公式副読本 16歳の教科書 なぜ学び、なにを学ぶのか』などの編集を担当。12年に講談社を退社し、作家のエージェントとなる現会社を設立。