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「『よく生き、よく死ぬ』課題を探せ」
 佐渡島庸平が語る仕事―3
写真
スマホで面白さを開拓する

デジタルの流れに
臆せず乗っていく

 僕は、エンターテインメントの仕事は、マンガの出版を始め本当に楽しいと感じていますが、「コンテンツと現実がもっと交わって」いったら、さらに毎日の暮らしが面白くなると考えています。そのカギを握るのは、マンガや本の場合もスマートフォンですね。

 しかし、コンテンツをスマホの中で楽しむためには、コンテンツがデジタル化され、インターネット化されて、スマホ化されるという3段階を経ないとダメなんですね。出版社はまだ最初のデジタル化のステップで苦しんでいますし、テレビはインターネット化にもほとんど至っていない。それが全部進んで、コンテンツが縦横無尽にスマホに流れ込んでくると、どんなことが起きるのか。

 今、私たちが持っているスマホは、持ち歩けるコンピューターだと言われていますね。通信もインターネットも利用しているでしょう。しかしその実力は、私たちが日々使いこなしている機能をはるかに超えてすごい。

 例えばあなたが今、満開の桜の木の前に立っているとします。持っているスマホは季節や時間などあなたの周りのリアルな状況を読み取り、あなたの現実にごく近い、最適な作家の物語を通知してくれる。それを読み終えると「桜の木がこういう表情をしているなんて以前は気づかなかった」というようなことが起きるかも知れません。

 すると桜の木に対する気づきも、ステキな物語に対する気づきも、どちらもぐっと深い経験になるでしょう。つまり、日常の生活の中で、ふっと全く思いもしない文脈のものを読むというような楽しさにつながっていくわけです。

 スマホが、僕らと現実を仲介する道具になり、現実をより楽しむためにフィクションが存在するという展開も起こり得るのですね。その状況で知る経験や気づきは、素晴らしいエンターテインメントとなって、あなたを喜ばせると思いますよ。

現実を楽しむための
フィクション

 小説『トム・ソーヤーの冒険』の中に僕の大好きなエピソードがあります。トムが、おばさんから罰としてやらされていたペンキ塗りを楽しそうにやって見せると、みんなが「俺にもやらせろ」と言い出す。それなら「代わりに何かをよこせ」と金品を受け取り、仲間にペンキ塗りをさせたというのです(笑)。

 こんなふうに世の中の出来事は、たとえ嫌な仕事でさえ見方を変えると状況が一気に変わる。喜劇と悲劇はすごく近いところにあって、その現実の在り方を変える手伝いがフィクションの役割であり、力です。だから、それが本の中に閉じ込められているよりも、身近に持っているスマホの中にある方が、フィクションの力をより発揮できると考えています。

 僕は「人は楽しむために生まれてきた」と思っている人間です。仕事をするために生まれてきたのではありません。でも、楽しむことの中には「自分の成長」が含まれていて、その課題を探して仕事を選んできていると思います。

 仕事は、人を楽しみや成長へと仲介してくれるエンターテインメントとも言えるかも知れない。見方を変えるって、面白いことですね。(談)

さどしま・ようへい ●(株)コルク代表取締役社長。1979年生まれ。東京大学文学部卒業。2002年(株)講談社に入社、モーニング編集部に所属。マンガ『バガボンド』(作者:井上雄彦)、『ドラゴン桜』(同:三田紀房)、『働きマン』(同:安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(同:小山宙哉)、小説『モダンタイムス』(同:伊坂幸太郎)、メッセージ本『ドラゴン桜公式副読本 16歳の教科書 なぜ学び、なにを学ぶのか』などの編集を担当。12年に講談社を退社し、作家のエージェントとなる現会社を設立。