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「行動が仕事力の真ん中」
 白石 康次郎が語る仕事―1
写真
海は仕事の覚悟をくれる

消えなかった少年の好奇心

 東京でサラリーマン家庭に生まれ、6歳で鎌倉へ引っ越し、海の近くで暮らす日々が始まりました。広大な海原を飽きずに眺め、この向こうには何があるのかと子どもらしい好奇心を膨らませていたものです。そんな少年が「地球が丸いなら船に乗れば世界を一周できるんだ。いつか僕も」と夢見るのはごく普通のことだったかも知れません。でも僕はそれを途切れさせることなく、その思いのまま学業を選び、就職をせず、間もなく50歳になる今も4度目の単独世界一周を目指している。「なぜ?」と聞かれると答えに窮しますが、「選択を迷ったことは?」と問われれば、全くないと断言できますね。

 船乗りを目指して水産高校へ進学し、海に生きるエンジニアとしての厳しさを5年間徹底的に教えられました。この時の先生が迫力と熱意にあふれた元船乗り。生徒は船に乗り込んで長期間海上で学ぶのですが、とにかく僕は船酔いがひどかった。来る日も来る日も嘔吐(おうと)袋を握り締め、エンジニアとして1日8時間、4時間ずつの2交代でエンジンルームのワッチ(当直)に立たなければなりません。とにかく苦しい。しかし先生は「船酔いは恥ずかしいことじゃない、誰でもする。ただ、船酔いをして仕事ができないのは船乗りとして失格だ。船酔いと仕事は関係ない」と檄(げき)を飛ばします。

 海上は、陸とは決定的に違います。海に出てみると実感しますが、全てが自然の摂理に支配される。島国である日本は、貿易量の99%以上を海上輸送が担っているそうですから、仕事と言えど週末も何も関係なく、毎日24時間安全に運航して港に戻るまで、海の上にいる全員に責任があります。だからこそやりがいがあり、働くなら海の上がいい。高校に入った頃は、客船のエンジニアになって世界一周をと将来の仕事を夢見ていました。

天才肌の師匠に出会う

 ところが、練習船での厳しい実践授業についていきながら、ある時、学校の舟艇部でディンギー(小型のヨット)を走らせる機会があり、ヨットなら自分一人の力で世界一周ができるのだと強い刺激を受けました。生意気な高校生ですから、その夢をかなえたいと考えた(笑)。でもどうすれば実現できるか見当もつきません。

 手掛かりを探して必死で調べ始め、出会った本が『オケラ五世優勝す』。著者の多田雄幸さんは単独世界一周ヨットレース「BOCチャレンジ」の優勝者、しかも僕の父と同い年です。一度でいいからお会いしてみたいという思いを抑えきれず、僕は電話帳を頼りに多田さんに連絡を入れました。何と世界一の覇者は、東京のタクシー運転手さんでした。高校生の僕を気さくに受け入れてくださり、ヨットにも一緒に乗せてもらい、何を聞いても面白おかしく、そして楽しげに教えてくれる。ヨットに掛かる資金集めのことも、海外の名高いセーラーとの付き合いを話す時もひょうひょうとしていて、多田さんは、ヨットを心から楽しむ本当に天才肌の人でした。

 僕は、航海に必要な小型船舶操縦士、ボイラー、冷凍、危険物取扱者などの国家資格を取りまくり、多田さんのサポートをさせてもらいながら、単独で世界を一周するというもう一つの目標を持ちました。(談)

しらいし・こうじろう ●海洋冒険家。1967年東京都生まれ。神奈川県立三崎水産高等学校(現・海洋科学高等学校)卒業。94年に26歳でヨット単独無寄港無補給世界一周の史上最年少記録(当時)を樹立後、多くのヨットレースで活躍する。2006年に単独世界一周ヨットレース「5オーシャンズ」クラスIで2位。08年フランスの双胴船クルーとしてサンフランシスコ〜横浜間の世界最速横断記録を更新。今年11月に単独無寄港無補給の世界一周ヨットレース「ヴァンデ・グローブ」に出場予定。著書『精神筋力』ほか。