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「伸びしろを求め、学び続ける」
  中川 政七が語る仕事―2
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君は自らに期待できるか

同業トップとの差を感じよう

 働いている人は「成長したい」とよく言います。うちの社員だけでなく、僕が出会った全く畑の違う会社の人やスポーツをやっている人などからも耳にする。でも、納得できる進歩がないと悩んでいます。それは現状認識を間違えているか、あるいは甘いのではないかと思いますね。物事の解決の7、8割は問題の発見にあるので、自分の現状認識がずれると解決しない。つまり成長につながらないわけです。

 例えば、ある下位のサッカーチームがなかなか強くなれずにいる。選手に話を聞くと、彼らは世界のトップの試合も日本のトップリーグの試合もあまり見ないという。同年代の成功している選手が書いた本もほとんど読まないそうです。それでも大きな試合でたまたま善戦できることはあるので、自分には実力があるのに運悪くこの下位チームにいるのだと思っている。トップ選手との違いは数字で見れば歴然としているのに認識しようとしない。だからいつまでたってもうまくならない。

 勝負の世界だけではありません。仮にあなたがプロダクトデザイナーだったとします。もし日本に5万人の同業者がいるとしたら、自分は5万人の中のどの辺りに位置するか、考えたことがありますか。そういう意識を持つことなく、日々の仕事をただ淡々とこなしていませんか。日本のプロダクトデザイナーと言えばパッと思い浮かぶのは深澤直人さんだと思いますが、その人と自身の差を自分なりに明確にして、それを埋めようとする思考が必要です。これはスポーツ選手も社会人も受験生も、次の行動を起こすためには大切なことだと思います。

 数字で立ち位置を知ることが難しい社会人であっても、「同業の人の優れた仕事と自分の差を認識する」「自身の問題を発見する」、そうやって仕事を面白くし、力をつけていって欲しい。もちろん経営者にも、社員にそういう気持ちを抱いてもらうようにするための責任があります。

自分の「心構え」を掘り下げる

 スポーツに携わる監督から興味深い話を聞きました。まだ8歳か9歳ほどの年齢の子どもたちから試合のメンバーを選ぶ時、監督が基準とするのは生活態度だというのです。スキルよりも、例えばシャワーを浴びる時にきちんと服をたたむかどうか。スキルがいくら高くても、人が見ていないところできちんとできない子は将来伸びないと、経験から判断できるそうです。

 さすがと共感しました。この、生活態度という言葉は「心構え」であり「主義」とも言える。僕は「スタンス」と呼んでいます。これは、日々の仕事に向き合う価値観の背骨ともなるものですね。主義なので一人ひとりが違っていても構わないし、正しいとか正しくないとかでもありません。ただ僕は、価値観が近い人と一緒に働くことはお互いに幸せであると考えてきました。人材採用で、あまりにも素晴らしいスキルと能力に目がくらんだ経験もありますが(笑)、うまくいかなかった。

 僕なりには「正しくあること」「誠実であること」「誇りを持つこと」「対等であること」「前を向くこと」「ベストを尽くすこと」など計10の言葉で心構えを表しています。あなたが仕事をして生きていく、その矢印はどこを向いているでしょうか。(談)

なかがわ・まさしち ●(株)中川政七商店代表取締役会長。1974年奈良県生まれ。京都大学法学部卒業。2000年富士通(株)入社。02年中川政七商店入社、08年13代社長に就任、18年3月から現職。日本初の工芸をベースにした製造小売り(SPA)業態を確立し、「日本の工芸を元気にする!」というビジョンで業界特化型の経営コンサルティングを手掛ける。独自戦略で高い収益性を維持する企業として15年に「ポーター賞」を受賞。著書は中川淳名義の『経営とデザインの幸せな関係』など。