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「俺らしく、真実を考える」
  太田 光が語る仕事―4
写真
試せ、自分の物差しで

当事者の、その怖さが本物だ

 仕事がない、身内からも評価されない、そしてウケない。芸人の三重苦ですね、これが。新人はオーディションもかなり受けるので、毎日が試験のような追い詰められた状態にもなります。でも俺は、そういう若手のネタを周囲の人間は絶対にいじるなと言い続けています。

 俺らが若手の頃にも、必死で作り上げたネタに審査しながらダメ出しをしてくるプロデューサーやディレクターなどがいました。もちろんワラをもつかむ気持ちで、一部を採り入れようとか、参考にしようとかと思うこともありました。でもその通りにやってウケたかと言えば、結果はほとんど出なかった。やっぱり、なぜこのネタかということを分かっているのは自分たちだし、もっとシビアに言えば、芸人としてお笑いの舞台に立ったことのない人間がネタにアドバイスするなんて、どう考えても違うと思うからです。

 舞台、つまりライブは怖い。俺たちはデビューして30年を過ぎた今も舞台に立つことを自分たちに課していますが、それは芸人としてナマのヒリヒリした怖さが大切だと思うから。理想はね、もう年老いた「爆笑問題」が、舞台の左右から真ん中のマイクに向かってヨタヨタと出てきて、練り上げたふうのネタも何もなく、好きなこと言って笑いを取り、はい、さよならって引っ込むこと(笑)。それは夢のようだよ。でも何の苦労もなくウケるなんて、かなわないと思うけどね。

 それは何も、芸人に限らず仕事をしている人は皆同じだと思う。それから、何だか息苦しいなあと毎日をやり過ごしている中学生や高校生だって、指導されたりアドバイスされたりするのは、もうおなかいっぱいだと感じてないだろうかね。食べていくために今の勉強が必要だと言われても「俺の人生、食べていくためだけかよ」って。「太田はお笑い芸人なのにいろんなことを言い過ぎる」とも言われるけど、俺には俺の「あれこれ考えたい」物差しがあるんです。

人間は、一面的じゃないよ

 世の中にあふれかえる情報ってやつが、自分にどんなことをしているか。逆に言えば、自分は知らないうちにどんな判断をさせられてしまっているか。考えてみると、脳みそを誰かに預けちゃってる。知らないことが多いので「まあ、とりあえず専門家のご意見にお任せします」みたいなね。そんな誘導から逃げて、今の自分の思いを突き詰めてみろと俺は言いたい。

 情報には発する側の意図が入っている場合もあるので、「じゃあ自分ならどうするかな」と考えることを出発点にしないとね。日本の未来を決めていく政治家だって、今まで保守派だと思っていたら左派寄りの発言をしたりすることもある。俺はそういう言葉もきちんと聞きたい。だって、自分が所属する組織や立場に従った硬直したままの義務的な発言は、その人の血が通ってないかも知れないから。何か、自分を取り巻く外の考え方に合わせるために、いい案を潰すのかと憂います。

 若い人は考えようよ、自分に引き寄せて自らの課題として。時間が掛かってもいいから、心の中をのぞき込んで、自分だったらこういう意見なんだけどな、ってね。絡め取られない覚悟があると世の中が違って見えてくるよ。(談)

おおた・ひかり ●お笑いタレント、漫才師、文筆家。1965年埼玉県生まれ。同じ日本大学芸術学部だった田中裕二氏と88年に漫才コンビ「爆笑問題」結成。93年「NHK新人演芸大賞」の大賞受賞。テレビ朝日系「GAHAHAキング 爆笑王決定戦」10週勝ち抜き初代チャンピオン。テレビやラジオでの活躍ほか文筆活動も活発で、『爆笑問題の日本原論』シリーズ、『マボロシの鳥』など多数。近著に『違和感』(扶桑社)がある。