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「自分の価値を追っているか」
  中須賀 真一が語る仕事―1
写真
学びが活(い)きる場を探す

飛行機少年、人工知能にときめく

 第2次世界大戦のブックシリーズなど、父の蔵書が自宅に数多くありました。たまに見開きで飛行機の設計図が掲載されると、幼稚園児の僕はその上に紙を置いて写し、やがて自分でも描けるようになった。これが工学事始めですね。小学生になるとプラモデルやUコン模型飛行機に夢中でした。

 1969年7月、アポロ11号が月に着陸するのを衛星中継で見ていた時、父親が、着陸するよりも月から帰ってくる方が大変なんだと教えてくれたのです。地球の大気圏に突入する際は、1度か1.5度という非常に狭い幅の範囲内に入れなくてはならないという。失敗すれば大気圏に跳ね飛ばされ、宇宙に飛んでいって乗組員は死んでしまうのだと。38万キロかなたの月から、その幅に入れられるのか。宇宙から帰ってこられなかったら人はどうなってしまうのか。8歳の僕は不安で不安で、無事に大気圏に突入して太平洋上に帰還した瞬間は感動しました。

 宇宙はすごい。そして航空も好きだ。その両方をやるなら東大の航空学科だと中学生の頃に知り、真っすぐそこを目指しました。入学後の1、2年は量子力学と相対性理論の本を読んで友達と議論を戦わせるのが楽しかったですね。航空学科では宇宙研究室に入り、宇宙の航法誘導制御の研究で卒論を書きました。そして修士課程に進む時、他学科の学生と一緒に人工知能(AI)の勉強会を始めることになりました。

 35年ほど前の当時、第2次人工知能ブームが訪れていました。海外から最先端の論文が来て、初めて学ぶ内容は実に面白かった。しかし研究室の教授はAIについて詳しくない。でも僕があまりにもAIの可能性を学びたいと言うので採用してくれ、AI研究がスタートしました。世界の中でもAIを実際に衛星に搭載したプロジェクトはまだなかったのですが、僕にとってはとても楽しい研究となったのです。

宇宙に役立つまで待てない

 AIを用いた軌道設計など、複雑な宇宙の問題に応用できるよう研究は進んでいきました。例えば軌道設計にAIを採り入れると、地球から木星にそのまま行く軌道のほかに、1回金星に行って重力を利用して加速し、地球に戻ってきて軌道を修正するスイングバイ航法も可能となり、非常にわずかなエネルギーで木星に行ける。こんな軌道は、相当数の探索実験をしないと実証できません。それを僕はAIを用いて計算し、国際的な学会で発表しましたが、誰も分かってくれなかった。

 AIの宇宙での取り組みという考え方が早かったのか。確かにAIには素晴らしい将来性があるけれど、その研究が本当に宇宙で使われるのは何十年も先かも知れない。宇宙分野は非常に堅実です。新技術を採用して何か事故が起きたら取り返しがつかないので、確実に動くものしか採り上げません。研究段階の技術では難しいのですね。

 宇宙分野でAIの研究をやってもやっても論文になるだけで実践に至らない。僕は現場主義なので、使ってなんぼ、使われてなんぼというのが好きなんです。10年先、20年先まで待つなんて飽き足らず、フラストレーションがたまりました。AIは、今すぐに社会のいろいろな分野で役に立つことは分かっている。だから、大学に残らず民間企業の研究所に就職しました。(談)

なかすか・しんいち ●東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻教授、工学博士。1961年大阪府生まれ。東京大学工学部航空学科卒業。同大大学院博士課程修了後、日本アイ・ビー・エム(株)に入社し人工知能や工場自動化などを研究。東京大学先端科学技術研究センター助教授、同大大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻助教授を経て2005年から現職。専門分野は宇宙システム工学、人工知能の宇宙応用など。