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「自分の価値を追っているか」
  中須賀 真一が語る仕事―3
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崖っぷち体験を早く

君は誰かの手伝いじゃない

 コーラの缶サイズで1年以内に超小型衛星を作ろう。それが1998年に始まった、日米の大学による合同プロジェクトでした。それはやがて10センチ立方ほどの衛星プロジェクト「キューブサット」になりますが、当時、衛星の設計図しか描いていなかった僕と学生たちにとって、その実現には幾つものやりがいと課題が詰まっていました。

 超小型の衛星を作る緻密(ちみつ)な作業から始まり、その衛星を打ち上げるロケットの手配はできるか、周波数の確保はどうするか、衛星を海外に持ち出す輸出の許可申請は出せるかなどなど、一つのプロジェクトを動かすには実に膨大な作業が必要です。僕は最初に少し助走をつける手順までやって、後はよろしくと全てを学生に担当させました。外国のプロジェクトマネジャーとロケット打ち上げの交渉もし、学生たちはそこまで自分たちがやるのかとびっくりしたことでしょう(笑)。

 ただ、24時間このプロジェクトのことを考え、関われる人間でなければ実現は難しい。もちろん僕は技術的なコンサルティングを惜しみなくやり、危ないと思ったら乗り出します。でも、いつも「これは誰のプロジェクトなんだ?」と彼らに問います。そして「誰かを手伝っているわけじゃない。君のプロジェクトなんだ」と念を押してきました。それでも、言われたからやっているという手伝い気分の学生は多くいる。しかし社会でも同じですが、目の前の課題は自分のものだと思うから、やるべき仕事へ動けるのです。

 例えば小型の衛星を作る時は、技術者が熱、構造、コンピューター、通信、姿勢制御などの各系列に分かれてスタートします。その延長でいくなら、自分の分担だけちゃんとやっておけばいいと考えます。でもこれは自分のプロジェクトなんだと思えば、全体を見て他の進み具合が気になり、できることがあれば手を貸そうとしますよね。全体での自分の立ち位置と技術の質が見えてくると、俯瞰(ふかん)と深い掘り下げの両方によって、自分のやるべき仕事というものが理解できるんですね。

責任を手にすれば伸びる

 何をするにも、自分一人じゃできないんだと知ること。そして周囲に言う必要はないけれど、自らの責任を意識しておくこと。これって自分だけの評価でいいんです。うまくいってもダメでも言い訳する必要はなく、本人レベルで判断すればいい。課題を胸に抱き、自問自答して欲しいですね。

 あの時は、進退窮まって崖っぷちだったというような経験もあったと思います。僕の下で小型缶衛星の日米プロジェクトに挑んだ学生たちも、ものすごいプレッシャーの中で三日三晩眠らないなんて当たり前だった。それでものぞきに行くと何とか仕上がっているわけです。精神的にも体力的にも、そして能力の面でも自分はここまでできるんだと知ったその「崖っぷち財産」。新しい地平が見えたと一度経験したら、それからの仕事人生に踏ん張りが利きますよ。どのような仕事でも、こういう体験を味わえるといいですね。

 自分の限界を体験すると、余裕を持って社会の中で仕事と対峙(たいじ)できるようです。ある教え子が「先生、企業ってラクですね」と言ってきた(笑)。さて、次は彼にどんな課題がやってきて、どう仕事をするか、楽しみです。(談)

なかすか・しんいち ●東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻教授、工学博士。1961年大阪府生まれ。東京大学工学部航空学科卒業。同大大学院博士課程修了後、日本アイ・ビー・エム(株)に入社し人工知能や工場自動化などを研究。東京大学先端科学技術研究センター助教授、同大大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻助教授を経て2005年から現職。専門分野は宇宙システム工学、人工知能の宇宙応用など。