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「働く充実は見つけられる」
  村山 昇が語る仕事―1
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上司から得た仕事構え

理論ではなく生活から発想する

 私は組織・人事コンサルタントとして15年、独立前は企業4社で約17年間勤務しました。この仕事人生32年の間ずっと、自分らしく健やかに働くってどうすればいいのかと考え続けてきました。仕事に追われ、迷い、これでいいのかと苦しんでしまうのはなぜなのか。私も同じだった。ただ今は、より良く仕事と向き合う考え方が見えてきました。

 大学生の頃、NHKなどのドキュメンタリー番組に引かれ、100年から2000年といった長い時間軸で大きな文明視座に立つ、例えばシルクロードのようなテーマに魅了されました。こんな番組を手掛けたいとテレビ局への就職を志望してかなわず、映像ではないが、0から1を作り出すもの作りをと文具メーカーに入社しました。

 そこには、大学では聞いたこともなかった上司の仕事観が待っていたのです。既に30年以上も前ですが、商品開発の現場では、マーケティングや戦略論など学術的な分野からの理論が主流でした。まず、どの世代がどのような日常を送っているかユーザーを調査し、嗜好(しこう)を分析する。その結果を下敷きにしての商品開発なら失敗は少ないと言われていたのです。ところが商品開発部の当時の部長は、全く別の示唆を与えてくれました。「理論に振り回されるな。売れ筋のまねもするな。自分が一生活者に立ち戻って、何が欲しいかを考え抜け」と。

 見つめるべきは自分の生活。これは既存の理論から分析するよりもずっと難しいことでした。注意深く日常を観察し、発見をしなくてはなりません。0から1を作るというのは、まだ世の中にないものを自分の心の中から探り出すことなのですね。その情報はどこにも載っていない。頭でっかちになるな、そういう視点をもらいました。

 3年後、経済記者に転職し、編集長からは「経済ジャーナリスト馬鹿になるなよ」とアドバイスされました。経済の目だけで世の中を見ていると、浅い記事しか書けない。幅広く、文化や風俗、各国の歴史や民族性などを勉強して、厚みのある記事を書けるようになれと教えられましたね。

「消費されない仕事」とは?

 そして社会人になって10年目の頃。仕事のさなか、ふと自分は時代のあだ花となる記事を書き散らしているだけではないかと感じたのです。3年前の自分の記事を読み返すと、やっぱりいたずらに時代や流行を追っている。人の記憶に残るような深さが全くありませんでした。以前の上司たちの「理論に振り回されるな、自分の生活から見つけよ」「一層広く学べ」といった仕事の気構えは頭では分かっていたものの、実際は表層的なレベルで踊っているだけでした。そして、消費されずに積み上がっていくような仕事をしたい。そんな気持ちが固まり始めたのです。

 この時期に知ったのが、中国のことわざ「1年の繁栄を願うなら作物を育てよ。10年の繁栄を願うなら木を植えよ。100年の繁栄を願うなら人を育てよ」。ああ、消費されない仕事とは人を育てる仕事かも知れない。そう直観した私は教育系出版に移りました。そこで出会ったのは、就職のノウハウだけを必死で追い求める多くの大学生たち。彼らにテクニックだけを伝授する教育に強い疑問が湧きました。(談)

むらやま・のぼる ●組織・人事コンサルタント、概念工作家。キャリア・ポートレート コンサルティング代表。1962年三重県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。プラス、日経BP社などを経て2003年に独立。94〜95年イリノイ工科大学大学院にて研究員、07年一橋大学大学院にて経営学修士(MBA)を取得。哲学の要素を盛り込んだ内省ワークを始め、独自手法で企業内研修を行う。著書『働き方の哲学』ほか。