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「働く充実は見つけられる」
  村山 昇が語る仕事―2
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仕事が空しくなる日は

学生たちの思い込み

 0から1を作り出す仕事をと、私は新卒で文具メーカーに入社、その3年後には経済記者となりました。ただ、時流を追う記事ばかり書くことに消耗し、7年で退社。消費されない仕事とは何だろうかと立ち止まり、自分にとっては人を育てることだと教育系出版社に移りました。配属されたのは大学生事業室という部署です。

 ここで学生の就職支援に関わるセミナープログラムを作りましたが、彼らと共に、働くことの根っこに下りていく議論がしたいと思いました。就職のスタートラインに立つ学生にとって重要なテーマだからです。そしてある大学で「就職セミナー 働くを考える」と題した4回シリーズを実践しました。募集1回目はたちまち200人ほどが集まり、私は根っこの問い掛けから講義を始めたのですが、2回目の参加者は50人ぐらいに減り、3回目は10人、最終回は4人となり、わずか2%しか残りませんでした。これは本当にショックでした。

 大学生たちには就職への切迫感があり、エントリーシートにどう書けばいいかといったハウツーだけを求めてきたのでしょう。このセミナーは即効性なしと判断されてしまったのです。でも、付け焼き刃的なテクニックだけで仕事に向き合っていると、消耗や空しさがやって来ます。人間は仕事を通して、内面の耕しやアイデンティティーの発見を望む動物なのです。

 米国の経営学者ピーター・ドラッカーが、その著書『プロフェッショナルの条件』でこのようなことを言っています。「私が13歳の時、宗教の素晴らしい先生がいた。教室の中を歩きながら『何によって憶(おぼ)えられたいかね』と聞いた。誰も答えられなかった。先生は笑いながらこう言った。『今答えられるとは思わない。でも、50歳になっても答えられなければ、人生を無駄にしたことになるよ』と」

 ひざを打つ問い掛けではありませんか。目の前に押し寄せる現実にはスキルで立ち向かわなくてはなりません。しかし心の底流には、「長い仕事人生で自分は何者になりたいか」という視点が支えだということなのです。

自分の心に何かが起きている

 合理化と効率化を推し進める企業内では、仕事は細分化され、高度に専門化されていきます。ということは、一人ひとりがその戦力となるよう果てしなく細分化されるということ。これが「自分は歯車に過ぎない」という感覚です。仕事は本来、自分そのものとつながっているはずなのに、スキルだけが切り取られて使われる。経済が複雑に発達するほどそれは加速していきますから、その分離が私たちには苦しいのです。

 先程のドラッカーの先生の問い掛けをたった今から、あなたが何歳であっても、どのようなポジションにいても試してみるといいと思います。50歳という時間に、ある種、自分が篩(ふるい)に掛けられるわけですね。まあ、こういう根っこに下りていく問いというものは、毎日忙しい仕事人にはなかなかなじみにくいことは承知しています。ですが、自分が仕事を通じて発する力は、何のために、誰のためにあるのかという「在り方」を問わないかぎり、「処し方」に永遠に振り回される仕事人生になってしまいます。(談)

むらやま・のぼる ●組織・人事コンサルタント、概念工作家。キャリア・ポートレート コンサルティング代表。1962年三重県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。プラス、日経BP社などを経て2003年に独立。94〜95年イリノイ工科大学大学院にて研究員、07年一橋大学大学院にて経営学修士(MBA)を取得。哲学の要素を盛り込んだ内省ワークを始め、独自手法で企業内研修を行う。著書『働き方の哲学』ほか。