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「働く充実は見つけられる」
  村山 昇が語る仕事―3
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キャリアに節目は来る

自分は、このままでいきたいか

 私は結果的に17年の間に四つの会社で働きました。振り返ってみると、どの転職も0から1を生み出す仕事を求めていたのだなと思います。それが自分の仕事を貫く軸というか「在り方」だったのでしょう。最初はモノを生み出す仕事、次は情報を生み出す仕事。そして最後は教育プログラムを生み出す仕事へと変わっていきました。

 キャリアという言葉は「荷車」に由来すると言われています。山あり谷ありの長き仕事人生を荷車を引きながら進んでいく。仕事で身につける能力や実績、思い出を荷台に積み重ねながら、轍(わだち)を残していく。私自身は0を1にするという創造の旅をしてきたわけですね。あなたも自分の仕事人生を一つの旅のイメージで捉えるとどうなるでしょう。その時、軸になるのはどんなテーマでしょう。

 41歳になった私は起業の道を選びました。それまでの経験から考え続けてきた、「働くとはどういうことか」をじっくりと考える研修サービスを世に問いたかったからです。スキルと効率が全盛の昨今、そんな即効性のない、根っこの問いを悠長に内省させる教育プログラムなど、買ってくれる会社はあるか、食べていけるか、自分に問いました。見つけた答えは私の好きな言葉、弓道の「正射必中」です。当てにいくのではなく、正しく心を研ぎ澄ませて、正しく構え、正しく射れば必ず当たる。おかげさまで、自分が良いと信じて地道に提案してきた独自の企業研修が、着実に根づきつつあることを実感する日々です。

 社会の変化に機敏に対応し、年収を上げ、社会的に認められるという「成功のキャリア」が広く称揚されてきました。しかしそうしたキャリア観はいろいろと齟齬(そご)をきたしています。これからは「健やかさ」が大切にされるようなキャリア観になるのではないでしょうか。各々が仕事を通して自分なりの正射必中を遂げていく。その過程で心身ともに充実していく。それが人生100年時代の一つの理想です。

働き方に唯一の正解はない

 仕事を続けていると、例えば自分の意志で変化を望むことがありますね。もっと得意分野を広げたい、ビジネス留学をしたい、大きく成長する業種に打って出たい。あるいは結婚や子どもの誕生などでプライベートと仕事の時間を見直したいということも。逆に、思いがけない外からの事情も突然やってきます。異動や遠隔地への転勤、介護といった家庭環境の変化など。そんないろいろな力が働いて、キャリアには流れの変化や節目ができます。

 そうした分岐点に立った時に大事なのは、やはり考える基点を持つことです。基点とは繰り返し述べている「在り方」です。私自身、大きな分岐点を幾つも経てきましたが、常にどうありたいか、何のためか、満たしたい価値は何かといった自問を忘れませんでした。一見、右往左往している経歴に見えますが、不思議と漂流感を覚えたことはありません。むしろ今では過去の偶然が全て必然だったような気さえします。さて、「在り方」にまなざしを向けた時、あなたの内にどんな声が聞こえてくるでしょうか。(談)

むらやま・のぼる ●組織・人事コンサルタント、概念工作家。キャリア・ポートレート コンサルティング代表。1962年三重県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。プラス、日経BP社などを経て2003年に独立。94〜95年イリノイ工科大学大学院にて研究員、07年一橋大学大学院にて経営学修士(MBA)を取得。哲学の要素を盛り込んだ内省ワークを始め、独自手法で企業内研修を行う。著書『働き方の哲学』ほか。