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「働く充実は見つけられる」
  村山 昇が語る仕事―4
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力が湧く、自分の深掘り

何の価値を届ける職業人か

 働き始めてから何年後か、あるいはもっと年月を経てからかは人によって様々ですが、キャリアの節目はおそらく誰にでもやってきます。それは自らが望んでというだけでなく、家庭や置かれた環境の事情などからという場合もありますね。そうした分岐点に立った時、立ち返るべき基点があれば人は強く決断できる。その基点が「在り方」を考えるということです。ですが「その在り方を考えるのが難しいんだよ」と多くの人から言われます。

 そこで私は「私の提供価値宣言」という内省ワークをお勧めしたい。自分は世の中に何の価値を届ける職業人でありたいか、という設問です。具体的には、「私は仕事を通して○○○を届ける職業人でありたい」という宣言の空欄を考えるものです。例えば、保険の営業担当者は直接的には金融商品を売っていますが、その核にあるのは「もしもの時の経済面での安心」という価値であり、それを届けています。私自身も研修サービスを売っていますが、提供価値の面から言うと「働くとは何かについての光と力」を届ける職業人でありたいと思っています。さて、あなたならこの宣言文にどんな提供価値を入れるでしょうか。

 そうして、こうした軸となるような想(おも)いが現実の自分を導いていくことを「セルフリーダーシップ」と言います。リーダーシップは他者を導くだけではないんですね。セルフリーダーシップは様々に成長意欲を促します。

 では、成長を呼び込むにはどうするか。私は三つの方向があると思います。まずは、自分を「広げる行動」です。読書やセミナー、旅行、留学など知らない世界に入っていく。二つ目は自分を「高める行動」。どんな仕事も改善しようとする意識を持ち、難しい依頼が来ても必ず「イエス」と引き受けて、方法は後から考える。最後は「深める行動」です。専門知識をもっと深める。人に教える、修羅場と知っても飛び込む。時にはおじけづくことがあるかも知れません。でも、自分がどんな価値を提供する職業人になりたいかということに気づいたら、進む勇気が湧いてきます。

決心するから強くなる

 人が根本から元気になるために一番良いのは、肚(はら)を決めることだと思います。すなわち、「在り方」のもとに決意し行動すること。文豪ゲーテは「心をよみがえらせる泉は、自分の胸中から湧いてこなければ、心身をよみがえらせることはできない」と書いています。そんな肚を決める孤独の時間にあっては、古今東西の偉人や賢人の言葉がエネルギーをくれるはずです。人間はどんなに時代が変わっても、苦しみや幸福の本質は同じです。かの偉人でも自分のように悩み苦しんだのか、そしてこんな思いにたどり着いたのか。そう知ると力が湧いてくるものです。

 今、会社組織や社会全体が「在り方」というものをなくし、スピード、効率、競争という「処し方」をもっと増せと要求しているように思えます。この状況を修正する手立ては、私たち一人ひとりが自分なりの「在り方」を見つめ、そのもとでそれらを手なずけること。それでこそ個と全体が健やかさを取り戻し、調和していけるのだと思います。(談)

むらやま・のぼる ●組織・人事コンサルタント、概念工作家。キャリア・ポートレート コンサルティング代表。1962年三重県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。プラス、日経BP社などを経て2003年に独立。94〜95年イリノイ工科大学大学院にて研究員、07年一橋大学大学院にて経営学修士(MBA)を取得。哲学の要素を盛り込んだ内省ワークを始め、独自手法で企業内研修を行う。著書『働き方の哲学』ほか。