メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

ここから本文エリア

朝日新聞デジタル > 転職 > 仕事力

朝日求人ウェブ
朝日新聞に掲載された求人情報
朝日新聞に掲載された求人情報
会員登録   会員登録すると直接応募やwebメールでの
送受信など色々な機能が利用できます。
ログイン  
パスワードを忘れたら ヘルプ
ご利用にあたって お問い合わせ
 
「理系の仕事は世界の要請だ」 中村修二が語る仕事―1
日本の教育では先がない
アメリカで驚いた
学生の力量

 カリフォルニア大学サンタバーバラ校の工学部で6年、自由で活力に満ちたアメリカの大学をその内側から見ていて、学生の力がまさにアメリカの原動力として機能していることに感嘆しています。10代のかなり早い時期から、本人も周囲もその特質を伸ばす教育を始めますが、大学ではすでに研究分野が固まっていて猛烈に勉強する。ご存じのように大学入試は容易ですが、進級はとても困難です。

 ドクターコースまで進んできた学生は、その研究内容と頭脳を企業に買ってもらうことになります。研究内容がすぐれていれば、初任給でも平均1千万円くらいは提示される。たとえば新しい構造の青色発光ダイオードを作った学生がいたとすると、その技術と学生の頭脳両方を企業が買い、学生は雇われた瞬間から研究プロジェクトのトップに就きます。そして下にエンジニアを雇って、すぐにプロジェクトを稼働させます。

 振り返って日本を見ると、就職面接で聞かれるのは大学での研究などではなく、クラブ活動でどのような成果を上げたかとか、趣味や得意な分野は何かとか。この時点ですでに日本の学生は何年遅れているのでしょうか。もしアメリカの学生に同じ就職面接をしたら、即裁判で訴えられます(笑い)。その人の学習や研究を無視したことになるからですが、悔しいことに日本の企業は今も、人の形をしたロボットを求めているようです。

永遠のサラリーマンを
大量に作り出す風土

 日米ともに、小学生は変わりません。夢や希望を持ち、やる気にあふれ、科学者になりたい、音楽家になりたいと考える。アメリカの小学生はそのまま夢に進む教育を受けますが、日本は我慢させ、その芽も摘んでいく。これは非常にはっきりしています。

 私も、辛抱して苦手な世界史などの暗記科目もがんばれと教育されました。大学まで進めば君のやりたい勉強ができるから、という教師の言葉を無理やり自分に言い聞かせ、押さえ込んできたのです。本当に興味の持てる学習ができたのは、大学も後半になってからですが、今も私の中には無為に過ごさざるを得なかった怒りが渦巻いています。

 頭脳も体力も伸び盛りで、なんでも吸収する活力にあふれていた中・高、そして大学時代まで、なぜ私はその思いを閉じ込めて苦しまなければならなかったのか。そして現在も日本中の若い人々が同じ苦悩の中にあって、気づかないうちに従順な永遠のサラリーマンへと育てられていく悔しさ。加えて、科学者になりたい、新しい発明をしたいというような夢を一笑に付す視野の狭さに憤ります。

 地球環境や食糧の問題を担うのは理系の仕事ですが、それを理解している企業も少ないのが実情です。日本の若い人にはまず知ってほしい。私たちは貧しい教育を受けて、今ここにいるのだということを。(談)

なかむら・しゅうじ ●カリフォルニア大学サンタバーバラ校工学部教授。1954年愛媛県生まれ。徳島大学工学部電子工学科、同大学院修士課程修了。79年日亜化学工業入社。93年青色発光ダイオードを独力で開発、実用化に成功。20世紀中には不可能といわれたその業績に対し、仁科記念賞、朝日賞、ベンジャミン・フランクリン・メダルなどを受賞。99年日亜化学工業退社。2000年より現職。06年、世界的な技術開発に贈られるミレ二ウム技術賞受賞。主な著書に『好きなことだけやればいい』(バジリコ)、『負けてたまるか!〜青色発光ダイオード開発者の言い分』(朝日新聞社)、『日本の子どもを幸福にする23の提言』(小学館)などがある。