メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

ここから本文エリア

朝日新聞デジタル > 転職 > 仕事力

朝日求人ウェブ
朝日新聞に掲載された求人情報
朝日新聞に掲載された求人情報
会員登録   会員登録すると直接応募やwebメールでの
送受信など色々な機能が利用できます。
ログイン  
パスワードを忘れたら ヘルプ
ご利用にあたって お問い合わせ
 
「理系の仕事は世界の要請だ」 中村修二が語る仕事―4
生涯一研究者として育て
仕事への熱意を
貫ける自由を求めて

  年功序列がまだまだ残っている日本の企業では、理系の社員であっても、部下を与えマネジメントの責任を持たせることが出世のバロメーターだと信じられているようです。

 しかし理系の仕事人にとっては、常に第一線で存分に研究を続けられる立場が重要です。たとえば10年がかりで取り組んだプロジェクトが成功したら、さらに次の課題へと突き進みたい。ところが研究で成果を重ね、ある程度の年月を経ると普通は管理職への昇進が待っている。マネジメントは明らかに文系の業務であり、この人事は理系のプロを文系に転換させたことに他ならないのです。

 もちろん本人が望むなら喜ばしいことですが、私は、管理職となって研究の一線を退き精彩を欠くようになった人を数多く見てきました。私自身もその経験があり、だからこそ現場で輝くスペシャリストの援護射撃をしたいと思うのです。

 日本は技術立国であると考えている人が非常に多いですが、それは「モデルとなる製品を学び、巧みに改造して生産する技術立国」といい直すべきでしょう。現在、中国、韓国、台湾などアジアの国々と同じ位置づけになりつつあることで、既に明らかだと思います。これから必要なのは、研ぎ澄まされた独創的な研究であり、それは個人の力量にゆだねられるでしょう。

 そのためには研究者の仕事の勢いを途切れさせず、生涯を通して資質を生かしきるしかありません。

さびつかないために
退社の覚悟を秘めよ

 勤め人にとってはなかなか勇気のいることではありますが、実績を重ねていい仕事をしながらも、数年単位で、この会社からスピンアウトしたらどうかと考えるべきだと思います。辞めるとなったら次はどこで働けるか、自分の何を評価してもらえるか。自分を厳しく振り返らなければならないし、勉強も本気にならなければなりません、が、これは研究者の力量を必ず高めます。

 さらに、会社サイドにも緊張感を持ってもらうことができるはずです。この人間はたぶん定年まで辞めないだろうと思われるより、これほど実力があるのに他に移られては困ると認識してもらうことです。私は、自分の反省もこめて、1度や2度は実際に退社することを勧めたい。いつの間にか研究の熱を奪われてしまう「茹(ゆ)でガエル」状態を自分自身で実感するためにも。

 必要以上に臆病(おくびょう)になることはありません。やりたい仕事を真っすぐに続けられるように、生涯一サイエンティストとして、好きな仕事を貫く道を選択してほしい。私も飛び出すのに20年を要しました。でも、外に出て仕事の自由は存在すると知りました。あなたも「自分は井の中の蛙(かわず)ではないか」とぜひ一度考えてみてください。(談)

なかむら・しゅうじ ●カリフォルニア大学サンタバーバラ校工学部教授。1954年愛媛県生まれ。徳島大学工学部電子工学科、同大学院修士課程修了。79年日亜化学工業入社。93年青色発光ダイオードを独力で開発、実用化に成功。20世紀中には不可能といわれたその業績に対し、仁科記念賞、朝日賞、ベンジャミン・フランクリン・メダルなどを受賞。99年日亜化学工業退社。2000年より現職。06年、世界的な技術開発に贈られるミレ二ウム技術賞受賞。主な著書に『好きなことだけやればいい』(バジリコ)、『負けてたまるか!〜青色発光ダイオード開発者の言い分』(朝日新聞社)、『日本の子どもを幸福にする23の提言』(小学館)などがある。