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災害も環境破壊も、国や民族を超えて起きる時代。
21世紀には、直感で理解し合える視覚言語が必要です。
多摩美術大学教授・NPO法人サインセンター理事長
グラフィックデザイナー
太田 幸夫
さん
おおた・ゆきお ●1939年愛知県生まれ。多摩美術大学卒業、イタリア国立美術学院修了。64年イタリア留学中より視覚言語LoCoS研究。東京造形大学、ピクトリアル研究所を経て、ミュンヘン大学およびアメリカ国立研究所から招かれ国際プロジェクトにあたる。通産省シンボルマーク&CI計画、世界統一規格「非常口」のサイン、「つくばセンタービル」「ヒルサイドテラス」などのサイン・コミュニケーション計画など実績多数。「慶應義塾幼稚舎サイン計画」により日本サインデザイン協会賞金賞、「非常口サインの新デザイン」により同大賞ほか受賞多数。主な著書に『ピクトグラム「絵文字」デザイン』(柏書房)ほか多数。多摩美術大学(電話03-3702-9846)、NPO法人サインセンター(電話03-5758-1399)。

 スマトラ沖の地震による津波は、国も民族もまったく関係なく、20万もの命を奪った。突然の大波に逃げ惑う人々の映像が、その恐ろしさを世界中に伝えた。海外メディアがTUNAMIと表記したことからも、津波災害の経験がほとんどない国々が多数だったことが分かる。

 太田さんはすぐに「津波」サインの新考案を発表した。今年1月、神戸で開催された「国連防災世界会議」でのことである。太田さんは数多くのサインやシンボルの制作を手がけてきた方だ。私たちがいつも目にする緑の「非常口」サインも、太田さんたちの手によって22年前に世界統一規格となった。

 「21世紀はあらゆる問題が地球的な規模で起きている。でも、“地球市民”になった私たちには言葉の壁や文化の壁があって、相互のコミュニケーションを非常に困難な状態にしていますね。その越えがたい壁を乗り越えられるのは視覚によることば、サインなのです」

 たとえば災害が起きる。唯一の頼りとなる避難誘導のサインは、国が違っても老人でも子供でも瞬時に判断できなければ命にかかわる。つまり、世界中の誰一人として誤解することのない表現まで突き詰めなければならない。そのためにはみんなの協力が不可欠なのだ、と。

 「避難誘導や、災害の危険告知だけにとどまりません。人口が増大して飢えに苦しむ地もあり、資源はこれから先細っていく。何とか人類が共生していくために協力し合いたいのに、地球上には3千もの言語がある。21世紀を生き抜くには、自己実現が可能な新たなコミュニケーションのメディアがどうしても必要なのだと訴えたいですね」

 すでに40年も前から太田さんは視覚言語を考案していた。絵文字によるそのシステムはLoCoS(ロコス)と名づけられ、世界で大きな注目と高い評価を得ている。

 「でも、その視覚言語は学ぶのに30分かかる(笑い)。もちろん世界で最も簡単ですが、本当は、人間の原体験による直感だけで理解できることが必要でしょう」。地球に生きる一人ひとりのために。太田さんの高い志は止まらない。

(3月15日掲載、文:田中美絵・写真:南條良明)

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